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プロレス×映画

権利買収で再構築されて生まれた珍作『クン・パオ! 燃えよ鉄拳』の経緯に「WWE版ECW」を思い出す

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 新作やリメイクを手がける配給会社が買い取るなどで古い映画作品の権利が移動する場合がありますが、『親指シリーズ(スター・ウォーズ等)』などで知られるスティーヴ・オーデカークが、香港映画『ドラゴン修行房』(1976、邦題:虎鶴雙形)なる無名作品の権利を買い取り、2002年当時最新のハリウッドの合成技術とCGを駆使して新たな作品として"再構築"した魅惑の珍作が『クン・パオ! 燃えよ鉄拳』。

 選ばれし者の"証"を持って生まれた青年が両親を殺した悪党に復讐を挑み、その裏に潜む謎の存在とも闘う!というのが再構築版のストーリー。ちなみに選ばれし者の"証"とは『親指シリーズ』を彷彿とさせる、キモカワな舌先謎生物「ベロンチョ」。

 ベース作品のイメージを踏襲した上で、オリジナルのままのシーン、オリジナルに新映像を合成したシーン、そして完全な新シーンを繋ぎ合わせた再構築版ですが、やはり軸となるのは新シーン。「ベロンチョ」や牛とのミルクバトル(『マトリックス』のパクリシーン有)などのCGほか、BGMにMCハマーの「U Can't Touch This」をぶっこんだり、無駄にカラっとした残虐シーンや下ネタ、敵集団との遭遇シーンでのカットイン連発などの執拗な被せネタやらアメリカンギャグが前面に出た作風です。

 プロレス界でもかつて、低迷したライバル団体「WCW」と「ECW」をWWEが買収(当時の一部選手、名称、映像使用権等)し、再構築を実行した例があります。「WWE版WCW」は諸問題で実現しませんでしたが、2006年に「WWE版ECW」が誕生。

「旧ECW」のイメージの強いRVDやサブゥーら出身者を軸にした形で再構築された「WWE版ECW」でしたが、保護者団体のクレームにより、売りだった流血を伴う過激な試合をTVで放映出来ず。さらに出身者の相次ぐ離脱でECWに無関係の中堅・若手選手だらけとなり、2010年に後続番組「NXT」にバトンを渡して消滅という悲しい末路に(現在WWEは権利を持つ昔の映像を販売するに留まっています)。

「旧ECW」がコアなファンに愛された団体だったため、理想と現実のギャップで評価は散々でしたが、幸い本作の場合、元映像からしてオリジナル作品の珍作臭が凄いせいか(※)、香港の珍作がアメリカの珍作にクラスチェンジした程度の印象なので、オススメし易い部類の珍作です。

 ただ、欧米でも昔のカンフー映画は「吹替」というお約束にならって、登場人物の吹替ほぼ全てを監督自身が担当しちゃっているので(日本語版は俳優の西村雅彦が担当)、押し付けがましいまでのユーモアへの耐性が必要かも。

 WWEでTAKAみちのくとフナキさんの日本人ユニット「カイエンタイ」が、口パクに英語の吹替を当てるギミックでブレイクしたことを連想して思い出しましたが、口の動きと吹替の台詞の量が合ってない部分など、映像とのフィット感・違和感を楽しむのが定石です。

(文/シングウヤスアキ)

※オリジナル「ドラゴン修行房」の主演・監督はジャッキー以前のカンフー映画界の大物ジミー・ウォング。アクションのキレや完成度よりも破天荒なアイデア勝負で攻める人物で、珍作好事家には伝説の人物として一目置かれる人物。孤高の珍作として知られる代表作『片腕ドラゴン』など、いずれはネタにしたい所存です。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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