ボンヤリした再現度がディスコ・インフェルノに相通じる『フォーエバー・フィーバー』
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洋物珍品はまだいくらでもあるし、ならば今回は名作......はスルーしてアジア映画の珍品でございます! アジアといっても東南アジア、しかもシンガポール映画となる『フォーエバー・フィーバー』(1998)。字面からしてもう何かを語っちゃってますが、あらすじを読めば、ほぼ想像がつくのでさらっと行きましょう。
時はディスコ・ブーム真っ只中の1977年。ブルース・リーとバイクに憧れる、しがないスーパーの店員ホックは、幼馴染のメイや悪友達に誘われて仕方なく観た人気映画「フォーエバー・フィーバー」の影響でバカにしていたハズのダンスの虜に......。
そうです。本作は「サタデー・ナイト・フィーバー(以下、SNF)」と「ブルース・リー(含む香港映画)」に触発されたダンシング・カンフー映画、なのです!
作中映画「フォーエバー・フィーバー」の主人公がスクリーンから飛び出してくる謎展開から(ホックは助言を求めて何度も映画館に通い詰める)、ダンス大会の賞金でバイク購入を思いつき、ダンス教室に通い始めるや次第に才能を開花。しかし、教室イチの美女(WWEのAJに似てなくもない)から大会のパートナーに指名されるも、美女の正パートナーだったキザ男の恨みを買ってしまうわ、パートナーを組むハズだった幼馴染との仲もこじれるわ、さらにはある問題を抱えた弟のことも気掛かりに・・・。
てな感じで、全体的なノリとしてはブルース・リー作品というより、後年のジャッキー・チェン以降の香港映画のイメージ。
割合としてはSNFオマージュネタが多いのですが、キーとなる作中映画「フォーエバー・フィーバー」のSNF再現度に関しては「カバーだけど同じ曲だし、トラボルタもどきの俳優のダンスもなんとなく似てる、かなぁ」というボンヤリ具合。
このボンヤリ具合はプロレス界の"トニー(SNFの主人公の名前)"ディスコ・インフェルノにも相通じるところ。ディスコ君も「トラボルタっぽいやろ?」といわんばかりの空気を出していましたが、キレの無いダンスとパチモノ感溢れるテーマ曲「Disco Fever」が思い出されます。ボンヤリと。
また、本作の原語はシンガポールで最もポピュラーな公用語である英語になっていますが、華僑系や近隣国の言語などが混ざり合ったシンガポール特有の「シングリッシュ」と呼ばれる"チャンポン"英語。
WWEなどに登場する非英語圏ギミックのレスラーもヒドイ訛りの英語を使うのが定番ですが、本作の場合、生活に則したリアルな訛りのため、聞き取り不能レベルの出演者もチラホラ(香港映画チックな吹き替えでの視聴がベター)。
ちなみにシンガポール出身のプロレスラーというと今現在もなかなか見当たらないのですが、98年前後に「みちのくプロレス」に参戦していた「ロン・スー」が知られます。
そんな感じで、パクリ感が先行する珍作ながら、ベタな兄弟愛や三角関係の理想的決着など、落とし所は意外としっかりしており、鑑賞後には不思議とほっこりする、謎の清涼感が味わえる本作。眠気を誘う洋物珍品で時間を捨てるくらいなら、この本作をオススメ致します。
(文/シングウヤスアキ)