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プロレス×映画

プロレスラー出演映画シリーズ:シュワちゃんにも出せない大味感がほとばしる『マイホーム・コマンドー』

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 プロレスラー出演映画といえば「大味」。これを良くいえばダイナミック、いやむしろ銀河的、とポジティブに置き換えてファミリー向け宇宙ヒーローコメディで味付けしちゃった珍品が、今回ご紹介する天下のハルク・ホーガン主演作『マイホーム・コマンドー』(1991)。
ホーガン主演作としては二作目で、プロレスキャリア的には、WWF(現WWE)でアルティメット・ウォリアーとの二枚看板を張っていた時期。

 銀河帝国の将軍スーターに誘拐された要人救出に失敗した宇宙戦士シェップ(ホーガン)は、将軍もろとも母艦を爆破するも、自身の宇宙船が燃料不足に。近隣惑星・地球でひそかに充電を待つ6週間、休暇ついでにウィルコックス家の貸し部屋を間借りするも、慣れない地球の生活で珍騒動の毎日。
しかも、シェップの素性を怪しむ家主のチャーリー(クリストファー・ロイド)がレーザー銃を発見し、誤って発射。そのエネルギーを検知した帝国軍によって2人の殺し屋が地球に送り込まれ、ウィルコックス家を巻き込んだ一大事に・・・

 という、本コラムで以前ご紹介した『フラッシュ・ゴードン』に一部似た設定ですが、あちらは地球外に行くお話で、こちらは地球に(色々)来るお話。さらにあちらは巨額予算を食い潰した変態美術と計算されたチープな演出が笑いのツボを強烈に刺激するスケールの大きいカルト珍作でしたが、こちらは典型的アメリカB級コメディ・フォーマットのやっつけ感とスケールの小さい滑稽さで笑いのツボをやさしく刺激するほっこり型の珍品です。

 本作のウリは、地球(90年代初頭のアメリカ)の文化や慣習を知らない居候シェップが、破天荒な宇宙戦士理論による過剰な反応で笑いを誘う点。
 危険運転DQNを車ごとひっくり返したりと正義感に基づく行動以外にも、街中のパントマイマーがシェップの余計な親切心で繰り返し痛い目に遭うなど、シェップと地球人のやりとりはほぼ全て予想がつくベタな笑いのため、「ヒドイなコリャ」と苦笑いしつつも何だかほっこりしてきます。

 シェップの凍結銃を盗んだチンピラが銀行強盗に及んだシーンでは、凍ってる感を演出するためか「ジングル・ベル」をBGMにする比類なきベタさ。ちょうどそこにやって来た殺し屋から逃げるため、シェップが直立不動で凍ったチャーリーを車に運び込み、サンルーフから飛び出した状態で走るシーン辺りになると「きっと当時のチビッコ・ハルカマニア(ホーガンファン)は大爆笑だったに違いない」と、自分が笑えなくても誰かが笑っていたハズだとすがるような気持ちに。

 元々はシュワちゃんとダニー・デヴィートの共演作候補として企画されながら、『ツインズ』が選ばれたため、ホーガン主演作に転用されたそうですが、シュワちゃんがシェップだったらここまで軽薄かつ大味もといダイナミックなテイストにはならなかったでしょう。

 また、殺し屋の片割れを「アンダーテイカー」として成功する前の若手時代のマーク・キャラウェイが演じていますが、子供(しかも幼女?)の声をアテレコされたりと、現在の孤高の重鎮のイメージから考えられない黒歴史っぷりで、ファンの方なら必見です。

 尚、某トマトサイトでのスコアは僅か20%という"相当腐ってる"判定なので、視聴についてはいつも通り自己責任ということでお願い致します。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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