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プロレス×映画

誘拐? WWEでは良くあることですけど何か

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「誘拐」を題材にした映画は古今東西、様々な作品がありますが、『身代金』は非常に"WWEっぽい"作品です。
内容は、息子を誘拐された金持ちのお父ちゃん(ギブソン)が身代金にしか興味のない犯人の意図に気付き、自身を追い回すマスメディアを利用して懸賞金をかけて、犯人グループを心理的に追い詰めて息子奪還を試みる...というもの。

 このTV中継を利用して犯人を追いつめていくストーリーラインは、まさにWWE的で、会場外にいるスパスタが会場内の大型ビジョンを通して衛星中継で抗争相手を挑発する状況にイメージがダブります。(衛星中継っても同じ敷地内で撮ってるか録画した奴を生中継の体で流してるらしいけども...)

 そもそもWWE的に「誘拐」自体が恒例行事。なんせ年に一回は誘拐ネタがあるんだもの。
番組上、週が開けても誘拐されたままなのはザラで、犯人が誘拐した対象を連れて会場入りしない方が稀。そして「どこにいる!」と会場内を捜しまわる被害者の姿に「そこじゃない!」とか「そこ行っちゃアカン!罠だ!」とツッコミを入れる視聴者と会場内の観客達...という黄金パターンが完成。

 WWEの場合、試合ルールの変更や王座挑戦という実利的な目的の他、只の嫌がらせなどが主目的で身代金を要求しないケースが多く、リング上で謝るか制裁としてボコられれば大体解決となる超アバウトな倫理観なので、誘拐事件は比較的カジュアルな行為なのである!

 それだけ頻繁にあると複数回誘拐された経験のある人物もいるワケで、ポール・ベアラーに至っては、二人の息子である(設定の)アンダーテイカー、ケインの抗争相手によってしばしば誘拐され、酷い時は生コンクリで生き埋めになったこともある程(後年シレっと復活してましたね)。

 さておき、他にも主人公が自分の裏金疑惑をもみ消して部下を切り捨てるなどビンス・マクマホン会長やトリプルHのような手段を選ばぬ人物像だし(メル・ギブソン本人のイメージのせいもある)、黒幕が追い詰められて自滅していく流れはWWEのヒールに良くあるパターンだしと、実にWWEっぽい『身代金』。ドラマ『CSI:NY』の「マック・テイラー」の印象が強いゲイリー・シニーズの意外な役まわり辺りも見所ですが、犯人グループの末路と結末への展開はWWEみたいにカラっと笑えないので、日曜夜に観るとドンヨリマンデー確定です。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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