連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第21回 イカレた連中こそ、本当の愛を知る。 〜『世界にひとつのプレイブック』

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 双極性障害・・・つまり「そううつ病」のことですかね。主人公は妻の不倫を目撃して、不倫相手をぶん殴ったりしたことから、刑務所、精神病院に送られ、やっと退院してきた男。
 一方、ヒロインは、夫を交通事故でなくしたショックで、職場の男全員とやりまくってクビになった精神病を患う元・ビッチ。
 このふたりがダンスを通してお互いの「欠落」を補完して、愛し合っていくハートフル・ストーリー。

 実は私も以前、似たような病に陥り、会社を辞めたり、クビになったりした経験がございまっせ。
 あのときはつらかったなー。ものすごく感覚が過敏になっているし、人の愛情というものに、疑り深くなっていました。

 この映画の主人公ふたりも、ある意味、人生を踏み外した「破たん者」「アウトサイダー」でありますが、お互いの凸凹をぶつけ合うことで、見事、ギアががちっと組み合わさった、ハッピーな物語でした。

 彼らは特殊な例ですが、私たちに何かの示唆を与えます。

 みなさん、愛する人に遠慮していませんか?

 相手によく思われたい。
 相手にめんどくさいと思われたくない。
 相手に嫌われたくない。
 相手とぶつかり合うのがめんどい。

 などなど。確かに、相手との日常が何のトラブルもなく、平々凡々と過ぎていくのはラクチンです。でも、そんな恋愛は本当に充実しているんでしょうか。

 表面上の当たり障りないつきあいを好む人が増えています。時代でしょうね。
 私もそんなところがあります。
 でも。ときどき、空しさを感じますよ。もっと熱くぶつかり、愛し合いたいと。

 相手の欠けている部分をスルーするのも優しさかもしれませんが、そこでガツンとぶつかって、火花を散らして得るものもあるんじゃないすかね。

 この映画を観て、感動したのは、退路を断った二人の捨て身でガチなぶつかり合いでした。涼しくなってきたことだし、この冬、あなたも熱く一波乱起こしてみるのもいいんじゃないですかね。燃えましょうや、すっぴんの自分で!

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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