宿根草が夏を元気に過ごすには

撮影:田中雅也
宿根草は寒さに強いものの、暑い夏は苦手なものが少なくありません。よく考えて植栽しないと夏の庭は寂しくなってしまいがちです。おぎはら植物園店長の荻原範雄(おぎはら・のりお)さんに、宿根草に夏を元気に過ごさせるコツを教えてもらいました。

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■夏を元気に過ごすには秋植えがポイント

植えてすぐに咲く一年草とは異なり、宿根草は開花までに時間をかけて株を充実させておくことが、たくさん咲かせるコツです。また、夏の暑さに耐える株に育てるには前年の秋に宿根草を植えておくことをおすすめします。庭で冬越しさせて時間をかけることで根の張りが強くなり、夏に枯れない丈夫な株に育つからです。
植え込む際は、開花期や草丈をある程度計算し、春から夏、秋へと花のリレーが楽しめるように配置します。また、春咲き、夏咲き、秋咲き、それぞれの種類が交ざるように植えてみましょう。季節ごとに花があちこちから顔を出すほうが、自然みがあってよいと思います。「花が同じ季節に一気に咲くのでワンシーズンしか楽しめない」「一斉に咲くとナチュラルに見えない」といったお悩みがある方はぜひお試しを。
植えつけなど、実際の作業は秋になりますが、今のうちに夏の庭を眺めて、あれこれプランを考えておくと、来年の庭はきっと見違えることでしょう。
テキストでは、夏に花を咲かせる宿根草のなかから、素朴ながらもかっこよく、夏の庭がおしゃれになる15種を紹介しています。

■じつは暑さではなく高温多湿に弱い

宿根草が夏に枯れてしまう原因の多くは、暑さではなく、高温時の多湿です。実際に、連日40℃を超えるハウス内でも、水やりに注意すれば問題なく栽培することができています。高温時の余計な水分が温水や蒸気となり、植物を腐らせてしまうのです。庭植えでは水はけと風通しがポイントになります。余計な水分を残さないために、庭土に軽石などを混ぜて、水はけをよくする工夫をしましょう。周囲の雑草や生い茂る庭木の整理をして、風通しを確保することも大切です。
ただ、夏に乾燥状態が続くのもよくありません。朝の涼しい時間帯に必要な水を与えて、日中の暑い時間帯には乾き気味になる状態が理想です。イメージとしては「毎日乾き具合を確認して、新鮮な水を必要な分だけ与える」こと。植物は気温が高い時期に徒長しやすいので、水分量は最低限にします。少し水分が足りないくらいのほうが引き締まった株になり、暑さに耐え丈夫に育ちます。
※一年草は発芽してから枯れるまで1年以内で終えますが、宿根草は、一度植えると冬を越して毎年花を咲かせ長生きする植物です。「宿根草」は園芸上の慣用語で、植物学的には多年草といいます。
■『NHK趣味の園芸』2021年8月号より

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