NHK杯戦を見て推し棋士をつくろう!
- 撮影:河井邦彦
『NHK将棋講座』2020年4月号の別冊付録は「観る将 はじめの一手 カズキ王位の推し棋士をつくろう」。プロの将棋を勉強したり、自分で指して上達を目指したい人。棋士のキャラクターや、さまざまな周辺情報から将棋界を楽しむ人。この数年で将棋界をめぐる環境は変わり、ファンも多様化してきました。その人の将棋が好き、人柄が好き。全部含めて応援したい棋士、すなわち「推し棋士」を作ろうというのが今回の企画です。木村一基王位がナビゲーターとなり、長屋に住む八五郎さんと熊五郎さんの推し棋士作りをサポートします。本稿では、木村王位ご本人の項目をお届け。
* * *
■NHK杯戦を見て推し棋士をつくろう!
亀戸天神にほど近い、昔ながらの古めかしい長屋で、2人の男が言い争いをしています。観る将棋ファンの八五郎と指す将棋ファンの熊五郎です。
熊 だからさ、俺が手取り足取り教えてやるから。いいからそこに座ってみなって。
八 何度言やぁ分かるんだい。将棋を指す指さないは自分の心持ちで決めるもんだ。それより日曜午前10時からの「将棋フォーカス」で、乃木坂46の向井葉月ちゃんを拝もうじゃねえか。
熊 それはそれでいいんだが、しかし……。
と、そこへジョギングの途中と思われるオジサンが通りかかりました。
熊 おっ、そこを行くのは木村の旦那。ちょうどいいや、俺に加勢しておくれよ。
木 やあ、どうもこんにちは。熊さんも八っつあんも元気そうでなによりだ。で、いったいどうしたんだい?
人のよい木村さんは将棋盤の前にどっかりと腰を下ろし、二人の話を聞いてあげます。
木 そうかそうか。うん、どっちの言うこともよく分かる。それぞれやりたいようにやるのが一番だが、せっかくの友達なんだから一緒に楽しみたいんだね。
八 こっちは一人でもいいんだが、熊のやつはどうしても相手が欲しいらしい。
熊 えらそうに言いやがる。退屈そうにしてるから声をかけてやってるんじゃねえか。
木 まあまあ。仲よく喧嘩ってのはまさにこれだな。わっはっは。
八 笑い事じゃねえや。ほら、もう葉月ちゃんの出番が終わっちまう。
木 となると、10時半からはNHK杯将棋トーナメントが始まるな。じゃあ、お二人さん。ちょっと私につきあっておくれよ。
熊 世話になってる旦那が言うなら何でもやるが……なあ、ハチ公よ。
八 ああ、異論ない。で、何やるんだい?
木 これから始まるNHK杯を見ながら、「推し棋士」ってのを作ってみないかい。
熊 推し棋士? そりゃまた、オシキシがましい話だなぁ。
八 それを言うなら、お仕着せがましいだろう。推し棋士っていうのはスポーツ選手とかアイドルとか、特定の人のファンになるってことかい?
木 まあ、そういうことだ。ちょうど第69回のNHK杯戦はベスト8が出そろっているから、まずはその8人を推し棋士の候補にしてみようか。
■ボヤく人 木村一基王位
千駄ヶ谷の受け師
木 おやおや、いい男が出てきたね。特にこう目元が涼しげで……。
八 はいはい。やっぱり自分のことは気恥ずかしいかい?
木 お二人さんがやりにくかったら、ちょいと向こうに行ってようか。
熊 ま、どうせあとで気になって聞いてくるんだから同じことだろう。
木 なんだい。人が気を遣ってやってるのに、「どうせ」なんてぇのは結構な言いぐさじゃないか。
八 えー、木村王位は意外と短気。しっかりメモしておかなきゃな。
木 まいったね。それで熊さん、私はどういう将棋指しだろうか。
熊 やはり受けの強さだな。特に相手の攻め駒を責める強気な受け。ときには玉が自ら進軍していくこともある。
八 「千駄ヶ谷の受け師」の名も、そういうところから来てるんだな。
木 呼び名がつくのは将棋が認知されている証拠。ありがたいことだよ。
解説にも注目
八 それから木村の旦那といえば、解説だな。テレビやネットはもちろん、大盤解説会でも笑いが絶えないんだ。
熊 将棋の内容もユニークに分かりやすく示してくれる。旦那は天下一品だね。
木 なんだい、うれしいことを言ってくれるじゃねえか。さあさあ。酒を飲みねぇ、寿司を食いねぇ。
熊 少しほめるとすぐ調子に乗るんだから。なぁ、八っつあん。
八 まったく、森の石松じゃないんだから。しっかりしてくださいよ。
※ほかの推し棋士候補はぜひテキストで! NHK杯戦から指し手をピックアップしたクイズ「この手を指したのは誰?」も掲載しています。
■『NHK将棋講座』別冊付録「カズキ王位の推し棋士をつくろう」2020年4月号より
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■NHK杯戦を見て推し棋士をつくろう!
亀戸天神にほど近い、昔ながらの古めかしい長屋で、2人の男が言い争いをしています。観る将棋ファンの八五郎と指す将棋ファンの熊五郎です。
熊 だからさ、俺が手取り足取り教えてやるから。いいからそこに座ってみなって。
八 何度言やぁ分かるんだい。将棋を指す指さないは自分の心持ちで決めるもんだ。それより日曜午前10時からの「将棋フォーカス」で、乃木坂46の向井葉月ちゃんを拝もうじゃねえか。
熊 それはそれでいいんだが、しかし……。
と、そこへジョギングの途中と思われるオジサンが通りかかりました。
熊 おっ、そこを行くのは木村の旦那。ちょうどいいや、俺に加勢しておくれよ。
木 やあ、どうもこんにちは。熊さんも八っつあんも元気そうでなによりだ。で、いったいどうしたんだい?
人のよい木村さんは将棋盤の前にどっかりと腰を下ろし、二人の話を聞いてあげます。
木 そうかそうか。うん、どっちの言うこともよく分かる。それぞれやりたいようにやるのが一番だが、せっかくの友達なんだから一緒に楽しみたいんだね。
八 こっちは一人でもいいんだが、熊のやつはどうしても相手が欲しいらしい。
熊 えらそうに言いやがる。退屈そうにしてるから声をかけてやってるんじゃねえか。
木 まあまあ。仲よく喧嘩ってのはまさにこれだな。わっはっは。
八 笑い事じゃねえや。ほら、もう葉月ちゃんの出番が終わっちまう。
木 となると、10時半からはNHK杯将棋トーナメントが始まるな。じゃあ、お二人さん。ちょっと私につきあっておくれよ。
熊 世話になってる旦那が言うなら何でもやるが……なあ、ハチ公よ。
八 ああ、異論ない。で、何やるんだい?
木 これから始まるNHK杯を見ながら、「推し棋士」ってのを作ってみないかい。
熊 推し棋士? そりゃまた、オシキシがましい話だなぁ。
八 それを言うなら、お仕着せがましいだろう。推し棋士っていうのはスポーツ選手とかアイドルとか、特定の人のファンになるってことかい?
木 まあ、そういうことだ。ちょうど第69回のNHK杯戦はベスト8が出そろっているから、まずはその8人を推し棋士の候補にしてみようか。
■ボヤく人 木村一基王位
千駄ヶ谷の受け師
木 おやおや、いい男が出てきたね。特にこう目元が涼しげで……。
八 はいはい。やっぱり自分のことは気恥ずかしいかい?
木 お二人さんがやりにくかったら、ちょいと向こうに行ってようか。
熊 ま、どうせあとで気になって聞いてくるんだから同じことだろう。
木 なんだい。人が気を遣ってやってるのに、「どうせ」なんてぇのは結構な言いぐさじゃないか。
八 えー、木村王位は意外と短気。しっかりメモしておかなきゃな。
木 まいったね。それで熊さん、私はどういう将棋指しだろうか。
熊 やはり受けの強さだな。特に相手の攻め駒を責める強気な受け。ときには玉が自ら進軍していくこともある。
八 「千駄ヶ谷の受け師」の名も、そういうところから来てるんだな。
木 呼び名がつくのは将棋が認知されている証拠。ありがたいことだよ。
解説にも注目
八 それから木村の旦那といえば、解説だな。テレビやネットはもちろん、大盤解説会でも笑いが絶えないんだ。
熊 将棋の内容もユニークに分かりやすく示してくれる。旦那は天下一品だね。
木 なんだい、うれしいことを言ってくれるじゃねえか。さあさあ。酒を飲みねぇ、寿司を食いねぇ。
熊 少しほめるとすぐ調子に乗るんだから。なぁ、八っつあん。
八 まったく、森の石松じゃないんだから。しっかりしてくださいよ。
※ほかの推し棋士候補はぜひテキストで! NHK杯戦から指し手をピックアップしたクイズ「この手を指したのは誰?」も掲載しています。
■『NHK将棋講座』別冊付録「カズキ王位の推し棋士をつくろう」2020年4月号より
- 『NHK 将棋講座 2020年 4月号 [雑誌] (NHKテキスト)』
- 日本放送協会,NHK出版
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