それいけ! 観る将ナイト
- 右から、広瀬竜王、木村王位、遠山六段、進行の文春スタッフ
2019 年10月に、「観る将ナイト」なるイベントが開催された。将棋のイベントではお決まりの大盤をいっさい使用しない内容。木村一基王位、遠山雄亮六段、そしてサプライズゲストも登場した「観る将」の集いをレポートする。
* * *
「まさかこんなイベントが成立するとはね」
現在の棋界で旬な人物の一人と言える木村一基王位が、会の終了直後に発した言葉である。
10月6日、渋谷の『LOFT9』で行われた「観る将ナイト」は、観る将棋ファン向けのイベント。文藝春秋のオンラインサイト「文春オンライン」には、特集の一環として「観る将棋、読む将棋」という将棋に特化したコラムサイトがある。その文春将棋が主催したのが「観る将ナイト」だ。
イベントは2部制になっており、遠山雄亮六段と漫画『将棋めし』の著者である松本渚さんが双方でメインパーソナリティを務めた。
第1部では「観戦記者のおしごと」と題して、集まったファンからの質問に壇上の観戦記者が答えた。登壇したのは本誌観戦記でもおなじみの君島俊介さんと小島渉さん、そして筆者の3名。いずれも「観る将棋、読む将棋」に記事を寄稿しているメンバーである。
■観戦記者になるにはどうすればいい?
話が前後するが、このイベントは参加したファンのみならず、壇上の我々もほろ酔いでざっくばらんにトークを交わすというのが一つの趣旨だった。会場から提供されたメニューには通常のものの他に「お〜い(王位)お茶ハイ」「激辛流からあげ(3個増量)」など、将棋ファンならニヤリとしてしまうものがそろっていた。
筆者も般若(はんにゃ)湯でのどを湿らせながら、振られた質問に対する回答を行った。そのすべては書ききれないが、1つだけ。
「観戦記者になるには?」
回答に窮する質問である。それがわかっていれば筆者の仕事がもう少し増える……じゃなかった。
筆者が将棋界で働き出した時代と比較して、将棋雑誌などの媒体が減っているので(筆者もスタートは雑誌編集だった)、新規参入は難しいのではというのが実感だ。
まずは棋戦を主催する会社に入り、将棋担当を目指すことが考えられる。担当記者は観戦記を書くより観戦記者に仕事を依頼するほうがメインとなるが、自身で書かれる方もいらっしゃる。ただ担当記者の方に聞くと、希望して将棋担当になるのは難しいようだ。将棋だけをやっていればいいということにはならないからである。
他には日本将棋連盟のモバイル中継記者をスタート(君島さんと小島さんは中継記者出身)とすることが考えられる。ただ、こちらも新規募集が常にあるわけではないのでチャンスとなるかは難しい。
このようになかなか大変だが、新風が吹かないと業界が活性しないと思うので、希望される方には是非ともチャレンジして欲しい。そして先輩として一言付け加えると「締め切りは守ったほうがいい」。
第1部では他に「棋譜コメソムリエ選手権」と「第1期“書く将棋”新人王表彰式」が行われた。
日本将棋連盟のモバイル中継には1手ごとに中継記者によるコメントがつく。そのコメントの中から識者による一押しを紹介するのが、この選手権の主旨である。
ソムリエに選ばれたのは、『師弟棋士たち魂の伝承』(光文社刊)の著者である野澤亘伸さん。『将棋「観る将になれるかな」会議』(扶桑社刊)の著者である岡部敬史さん。ねとらぼアンサー編集長の杉本吏さん。そして漫画家の松本渚さんの4名が、印象に残るという棋譜コメントを、持ち時間をオーバーしながら暑苦しく語りまくった。
また「観る将棋、読む将棋」では新たに「書く将棋」と題して書き手を募集していた。将棋に関するテーマの原稿だが、棋譜や局面図は使わないのがルールで、盤面以外で将棋の魅力が伝わることを重視する。その「第1期“書く将棋”新人王」として表彰されたのが、宮田聖子さんの『どんな世界にも光のあたらない部分がある―― 将棋大会運営者から見た奨励会員』。受賞作品をはじめとする入賞作は文春将棋内の「観る将棋、読む将棋」にて公開されている。
文・写真:相崎修司
※続きはテキストでお楽しみください。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2020年2月号より
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「まさかこんなイベントが成立するとはね」
現在の棋界で旬な人物の一人と言える木村一基王位が、会の終了直後に発した言葉である。
10月6日、渋谷の『LOFT9』で行われた「観る将ナイト」は、観る将棋ファン向けのイベント。文藝春秋のオンラインサイト「文春オンライン」には、特集の一環として「観る将棋、読む将棋」という将棋に特化したコラムサイトがある。その文春将棋が主催したのが「観る将ナイト」だ。
イベントは2部制になっており、遠山雄亮六段と漫画『将棋めし』の著者である松本渚さんが双方でメインパーソナリティを務めた。
第1部では「観戦記者のおしごと」と題して、集まったファンからの質問に壇上の観戦記者が答えた。登壇したのは本誌観戦記でもおなじみの君島俊介さんと小島渉さん、そして筆者の3名。いずれも「観る将棋、読む将棋」に記事を寄稿しているメンバーである。
■観戦記者になるにはどうすればいい?
話が前後するが、このイベントは参加したファンのみならず、壇上の我々もほろ酔いでざっくばらんにトークを交わすというのが一つの趣旨だった。会場から提供されたメニューには通常のものの他に「お〜い(王位)お茶ハイ」「激辛流からあげ(3個増量)」など、将棋ファンならニヤリとしてしまうものがそろっていた。
筆者も般若(はんにゃ)湯でのどを湿らせながら、振られた質問に対する回答を行った。そのすべては書ききれないが、1つだけ。
「観戦記者になるには?」
回答に窮する質問である。それがわかっていれば筆者の仕事がもう少し増える……じゃなかった。
筆者が将棋界で働き出した時代と比較して、将棋雑誌などの媒体が減っているので(筆者もスタートは雑誌編集だった)、新規参入は難しいのではというのが実感だ。
まずは棋戦を主催する会社に入り、将棋担当を目指すことが考えられる。担当記者は観戦記を書くより観戦記者に仕事を依頼するほうがメインとなるが、自身で書かれる方もいらっしゃる。ただ担当記者の方に聞くと、希望して将棋担当になるのは難しいようだ。将棋だけをやっていればいいということにはならないからである。
他には日本将棋連盟のモバイル中継記者をスタート(君島さんと小島さんは中継記者出身)とすることが考えられる。ただ、こちらも新規募集が常にあるわけではないのでチャンスとなるかは難しい。
このようになかなか大変だが、新風が吹かないと業界が活性しないと思うので、希望される方には是非ともチャレンジして欲しい。そして先輩として一言付け加えると「締め切りは守ったほうがいい」。
第1部では他に「棋譜コメソムリエ選手権」と「第1期“書く将棋”新人王表彰式」が行われた。
日本将棋連盟のモバイル中継には1手ごとに中継記者によるコメントがつく。そのコメントの中から識者による一押しを紹介するのが、この選手権の主旨である。
ソムリエに選ばれたのは、『師弟棋士たち魂の伝承』(光文社刊)の著者である野澤亘伸さん。『将棋「観る将になれるかな」会議』(扶桑社刊)の著者である岡部敬史さん。ねとらぼアンサー編集長の杉本吏さん。そして漫画家の松本渚さんの4名が、印象に残るという棋譜コメントを、持ち時間をオーバーしながら暑苦しく語りまくった。
また「観る将棋、読む将棋」では新たに「書く将棋」と題して書き手を募集していた。将棋に関するテーマの原稿だが、棋譜や局面図は使わないのがルールで、盤面以外で将棋の魅力が伝わることを重視する。その「第1期“書く将棋”新人王」として表彰されたのが、宮田聖子さんの『どんな世界にも光のあたらない部分がある―― 将棋大会運営者から見た奨励会員』。受賞作品をはじめとする入賞作は文春将棋内の「観る将棋、読む将棋」にて公開されている。
文・写真:相崎修司
※続きはテキストでお楽しみください。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2020年2月号より
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