生活の中のアクセントに 休憩にいただく一服の薄茶

縁側で薄茶を味わう小河さんと若い庭師たち。「薄茶は本当においしい。もう一服いかがですかと聞かれたら断ったりしませんよ。二服目がまたうまいんです」(小河さん) 撮影:竹前 朗
お茶は茶室でいただくものとは限りません。毎日の生活のさまざまな場面にお茶を取り入れることができます。仕事場でお茶を楽しんでいる庭師の小河正行さんを紹介します。

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■茶庭の手入れの合間に

冬のやわらかい光の中、京都・西方尼寺(さいほうにじ)の庭を手入れしている小河正行さんと若い庭師たち。午後三時になると「どうぞ一服なさってください」と、寺で茶道を学ぶ女性がお菓子と薄茶を運んで来てくれました。
「ありがとうございます。遠慮なくいただきます」と明るく返事をして、小河さんは弟子の重森紀人さんと立花彩さんを呼び、縁側に腰かけました。薄茶をのむ姿も様になっています。庭師になった当初、親方に言われて始めた茶道でしたが、小河さんは今でも月に二回お稽古に通っています。
「自分がお茶をやってみて初めて、つくばいや石の寸法や配置の妙がわかる、露地の大切さが実感できる。だから若い庭師にもお稽古をすすめます」
重森さんは庭師になる前から茶道のお稽古に通い、茶名も取得しました。立花さんも祖母が茶道をしていたため、茶庭には親しみを感じています。
お茶の先生の庭を任されることの多い小河さん。「三時に薄茶を出してくれる先生も珍しくないですよ。仕事の合間にいただくお薄は格別で、もうひと頑張りの元気が出ます」

■施主と一緒につくる茶庭

裏千家の桐蔭(とういん)席の露地をあずかる小河さんは、自分の仕事は茶庭だけと決めています。といっても「露地はこうあるべき」とこだわることなく、小河さんは施主とよく話し合い、その人が望む茶庭を一緒につくりあげます。
「露地は一年中同じ景色がいいといいますよね。でも、おもてなしの形は施主によって違うし、自分好みの庭なら施主も愛着がわく。だからそれを形にして、日常の手入れ方法をアドバイスして庭を大切にしてもらいます」
小河さんの匠の技と温かい人柄がお茶人との信頼関係を生み、ごく自然に薄茶一服のもてなしにつながるのでしょう。
■『NHK趣味どきっ!茶の湯 裏千家 心通わすお茶』より

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