「想定」にとらわれない

イラスト:八重樫王明
津波に対しては、一刻も早く安全な場所に逃げて、身の安全を確保しなくてはいけません。
「これくらいの地震なら……」「まだ大丈夫だろう」という勝手な判断はとても危険です。海の近くや河口付近にいるときに地震が発生したら、まずどんな行動を取るべきなのか、津波から身を守る考え方を確認しておきましょう。防災・危機管理アドバイザーの山村武彦 (やまむら・たけひこ)さんが、津波から身を守るために覚えておきたい4つのポイントを教えてくれました。

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■津波は「逃げるが勝ち」

三陸地方には、津波からの教訓から生まれた「津波てんでんこ」という言葉があります。津波はあっという間にくるので、誰かを待たず各自それぞれが全力で逃げなさい、という意味です。この言葉を実践して、多くの人たちが助かった事例もあります。
海岸近くにいるときに地震が起きたのなら、津波警報が出る出ないにかかわらず、念のために高台などに移動を。警報が解除されるまでは、安全な場所から動かないようにします。
とにかく津波は、逃げるが勝ちなのです。

■「想定」にとらわれない

東日本大震災では、津波で多くの尊い命が失われました。過去の災害を教訓に津波対策を行っていた地域でさえ、大きな被害が生じてしまいました。その背景には、このときの津波が「想定」を大幅に上回る規模だったから、ということがあります。津波における想定とは、ひとつの目安とされる「安全ライン」にすぎません。常に「もしかしたら危険では」と考える習慣をつけてください。

■車では避難しない

車でなければ行けないような避難場所ではなく、徒歩で行ける近くの避難場所や高台などを探しておきましょう。大勢の人が一斉に車を使うと、渋滞が起こり、車ごと津波に流されてしまう危険性があります。また、踏み切りが開かず渋滞が発生した例もありました。
道路は、車を使わなければ避難ができないお年寄りや体の不自由な人たちのために空けておくと心得ましょう。徒歩避難が原則ですが、それが困難な地域では車での避難を指針としている場合もありますので、各自治体に確認しておきましょう。

■津波からは垂直避難

近くに指定された避難場所がない場合は、逃げ込める堅牢なビルの4 階以上を目指します。これまでは3階なら安心だとされていましたが、今は4 階以上を目安にしています。ただし、これもあくまで「想定」です。「4 階だから安心」と考えずに、より高い場所を目指しましょう。
■『NHKまる得マガジン 家族を守る!現場に学ぶ防災術』より

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