レジェンドvs. 若手最高峰

左/趙 治勲名誉名人、左/芝野虎丸七段 撮影:小松士郎
第66回NHK杯2回戦 第11局は、趙 治勲(ちょう・ちくん)名誉名人(黒)と芝野虎丸(しばの・とらまる)七段(白)が対戦する注目のカードとなった。佐野真さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■レジェンドVS. 若手最高峰

入段時から大器との呼び声が高かった芝野虎丸七段(19歳)が5年目となる2018年、さらなる躍進を遂げた。本因坊戦リーグで4勝3敗と勝ち越して3位タイの成績を残すと、名人戦リーグでは6勝2敗で2位。さらに棋聖戦のBリーグで優勝を果たして挑戦者決定トーナメントに進出(1回戦で同学年のライバルである大西竜平三段に敗退)するなど、今やどの棋戦でも挑戦権を争う存在となっているのだ。
近い将来、タイトル戦の舞台に登場することは間違いなく、井山裕太NHK杯(五冠)や許家元碁聖と天下を争うことになるわけで、それはすなわち、このNHK杯でもすでに優勝候補であるということにほかならない。速くて正確な読みと計算能力に加え、類いまれな勝負度胸の持ち主でもあり、テレビ早碁は最適の舞台である。
今期の初戦はレジェンド・趙治勲名誉名人(62歳)との対戦。2回戦屈指の注目局となった。

■鮮明な構図


先番となった趙が打った最初の三手は黒1、3、5と、すべてが三々。星に対しダイレクトに三々入りする手法が広まったこの現在だからこそ実現した立ち上がりで、趙の「実利で徹底先行」の意図がうかがえる。
白20の切りに対しては1図の黒1と切る選択肢もあり、白6までとなるような進行がよく打たれているが、趙は黒21とカカえて白24までと換わり、先手を得て黒25と右上に先着した。


そしてこの黒25に対し、手抜きで白26と下辺に向かった呼吸は勉強になる。解説の武宮正樹九段いわく「2図の白1とオサえても黒2に切られ、左右に弱い石を抱えるだけでよいことがない。手抜きが妥当」とのこと。白26から32と下辺を構え、黒の実利vs.白の勢力という構図が鮮明となった。

芝野は平素より、19歳とは思えないほどの冷静沈着な言動で知られているが、まだ経験が少ないこのテレビ対局でも、落ち着き払って対局に臨んでいる。左上で黒33から43まで、はやりの定石が打たれたあと、右上の白石から白44の二間トビ。右下を中心とした模様で打てるという、自信の石運びなのであろう。
※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK囲碁講座』2019年1月号より

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