「人工授粉」はなぜ必要?

カボチャの人工授粉作業。雄花をつけ根から摘み取り、花びらを取り除く。雄花の中心にある雄しべの花粉を、雌花の雌しべに軽く押し当てる。完熟は40〜50日後なので、収穫時期の目安のために日付を書いたラベルをつける。撮影:福田 稔
カボチャやトウモロコシには「人工授粉」が必要です。その理由を、恵泉女学園大学人間社会学部教授の藤田智(ふじた・さとし)さんに教えてもらいました。

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自然界では、植物は昆虫や風の働きで受粉して実がつきます。家庭菜園で、より確実によい実をつけるため、人間がお手伝いをするのが「人工授粉」です。実を食べる野菜で受精しにくい花のタイプや花の数が少ないもの、低温期で昆虫の活動が鈍い、花粉が雨にぬれて受精できない、などのときに行います。

■花のタイプで要不要がわかる

花には、1つの花に雄(お)しべと雌(め)しべが同居する「両性花」、1つの株に雄花(おばな)と雌花(めばな)が別々に咲く「雌雄異花同株(しゆういかどうしゅ)」、さらに雄花と雌花が、別々の株につく「雌雄異株(しゆういしゅ)」があります。「両性花」が自然受粉しやすいのに対し、「雌雄異花同株」は、受粉の確率が低めです。人工授粉をすることで受粉のチャンスを高めてあげましょう。

■人工授粉が必要な野菜

カボチャ[雌雄異花同株]
虫媒花だが、虫頼りでなく人工授粉で残す実を限定し、確実に実をつけさせるとよい。おいしい完熟(収穫)時期を見極めるためにも有効。
トマト[両性花]
大玉、中玉トマトは第一花房(だいいちかぼう)に実がつくと、その後の実つきがよくなるため、第一花房で人工授粉を行う。ミニトマトは花数が多いので不要。
トウモロコシ[雌雄異花同株]
風媒花で、雄花は株の頂部、雌花は下部に咲く。花粉は遠くまで飛ぶので自然受粉でも実はつくが、人工授粉で確実に受粉・受精させると、ぎっしりと粒のそろった実になる。
イチゴ[両性花]
人工授粉をしなくても実はつくが、より大きく形のよい実にするために行うとよい。柔らかい筆などで、軽く花の中心をなでる。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2018年4・5月号より

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