「子どもの幸福度1位」のあの国の"目からウロコ"な子育て法とは

世界一幸せな子どもに親がしていること
『世界一幸せな子どもに親がしていること』
リナ・マエ・アコスタ,ミッシェル・ハッチソン,吉見・ホフストラ・真紀子
日経BP
1,760円(税込)
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 ユニセフが行っている「先進国における子どもの幸福度」調査(2013年)で、総合1位になったのは、オランダです。この調査は、子どもたちの物質的幸福、健康と安全、教育、日常生活上のリスク、家族と環境の5つの分野で各国を比較したもので、どの分野でも上位を占めたオランダでは、実に95%以上の子どもが自分は幸せであると答えたそうです。

 本書の著者は、アメリカ出身のリナ・マエ・アコスタさんとイギリス出身のミッシェル・ハッチソンさん。本書では、結婚を機にオランダに移り住んだこの2人のママが身をもって知ったオランダ式の子育てが紹介されています。

「オランダ文化の根本には、子育てを生活の中心に置く家庭的な人々の考えがある。オランダの親は自分の子どもを所有物としではなく、1人の人間として見ており(中略)目標を達成する事だけが必ずしも子どもの幸せにつながるとも考えない。親と子どもの両方が幸せであることではじめて自分の力を高め、成功することができるという事をきちんとわかっている」(本書より)

 そんな子育てを現実のものにしているのは、本質に従って物事を考えるシンプルで質素なオランダ人気質であり、パートタイマーという働き方を積極的に取り入れた仕事と生活のバランスの取れた暮らしであると筆者たちは語ります。オランダ人の週平均就業時間は29時間で、子どもと過ごす時間が充分にあり、父親と母親は家事や育児を分担して行っています。加えて、オランダの会社は父親の子育てに理解があるというのです。

 妊娠・出産は日常生活の一部と考えられていて、自宅でリラックスして家族と迎える出産を望む妊婦が多いのも、オランダならではと言えるでしょう。自宅出産は助産師と医師が密接に連絡を取り合う統合ヘルスケアシステムで支えられており、産後すぐに8~10日間ほど産後ケアと育児指導、家事までを行う産褥看護師(さんじょくかんごし)が国から派遣されるそうです。他にも、私立の学校がなく、子どもたちは自分の希望と学力のレベルに合った学校で勉強することになっているなど、オランダには日本やアメリカ、イギリスとは異なる福祉や教育の制度が導入されています。

 オランダ式子育てを象徴しているのは、街のあちこちに運河があるにもかかわらず、子どもが水に落ちないように柵を作るのではなく、たとえ落ちても自分の身を守れるように幼いころから着衣水泳を教えるという考え方でしょう。大人が危険を取り除くのではなく、自分で危険に対処できる子どもを育てれば、子どもの独立心が育ち、自然と自立していくというわけです。オランダでは、子どもが親の目の届かないところで自由に外遊びをしている姿は珍しくないようです。

 ちなみに本書の日本語訳を担当した吉見・ホフストラ・真紀子さんもオランダ人男性と結婚して、オランダで子育てをする日本人女性。「オランダの人たちは、子どもに寛容だし、お節介なくらいに親切なので、子育てをしやすいという実感はあります。でもオランダであれ日本であれ、両親が幸せでいつも笑顔であれば、それだけで子どもは幸せなはず。日本のママ・パパも肩の力を抜いて前向きに子育てをしてください」とコメントを寄せてくださいました。

 国土面積は九州と同じぐらいで人口は約1700万人という小国ながら、独自の言語を持ち、経済面でも世界に存在感を示すオランダという国。本書は、幸せな子どもを育てるオランダ式の育児法ばかりでなく、それを支える国民性や文化を理解するためにも役立つ一冊にです。

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