小さな町工場がロケット事業に挑戦!? 日本の技術力を信じた男たちの物語

下町ロケット
『下町ロケット』
池井戸 潤
小学館
1,836円(税込)
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 第145回直木賞が7月14日に発表されます。書籍『下町ロケット』(小学館)は候補作品5作のうちのひとつで、宇宙ロケット制作に情熱を捧げる小さな町工場を舞台にしています。

 物語は研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平が、打ち上げに失敗し辞任するところから始まります。その後、航平は父親の経営する大田区の小さな町工場「佃製作所」を継ぐことに。細々と町工場を経営していた航平でしたが、ある日、大手取引先から取引終了を突然言い渡されてしまいます。時代は大不況。銀行からは経営資金の融資を断られ倒産の危機を迎えます。

 しかし、最先端の技術力を持つ佃製作所は、逆境にも負けず、町工場としてプライドを持って「ロケット制作」という新たな事業に向かっていきます。

 「仕事というのは二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は飯を食べるなど生活に必要な金を稼ぐために働く。だけど、それだけでは窮屈で仕事には夢がなきゃならない。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」

 先行きの知れないロケット事業に不安を示す社員たちに、航平はこう語りかけます。損得ばかりではなく、何よりも「夢」を大事に生きる社長の姿に、反発していた社員だけでなく、敵対するライバル企業でさえも次第に心を動かされていくのです。

 経済的な不安定さが続く今の日本では、多くの人が「現状維持」を第一に考えがちです。しかし、同書では、自分たちや自分たちのやっていることを信じ、挑戦し続ける大切さを読者に気付かせてくれます。


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