構想25年のSF小説で快挙なるか 直木賞候補作『ジェノサイド』

ジェノサイド
『ジェノサイド』
高野 和明
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,944円(税込)
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 初の直木賞候補作となった高野和明著の『ジェノサイド』。「大量虐殺」の意をもつ本作は、薬学部の大学院生・研人と、アメリカ人の傭兵・イエーガー、二人の主人公による物語です。

 急逝した父親から一通のメールが届くと、研人は導かれるように謎の研究所にたどり着き、父の極秘任務を受け継ぐことになります。一方、イエーガーは、難病の息子の治療費を稼ぐため、詳細不明の危険な作戦に加わることを決意。コンゴのジャングル地帯に潜入します。事情の違った二人の人生が交錯する時、物語は驚きの展開へ......。


 現在46歳の高野さんは、2001年『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し、華々しくデビュー。同作は、ミステリーでありながら、死刑制度を真正面から取り上げ、読みごたえのある作品として、高い評価を受けました。

 『ジェノサイド』は、そんな著者が20歳の頃から構想を練った作品。イエーガーの任務にからむ、ある"生命体"のアイデアは、当時読んだ立花隆著の『文明の逆説』から得たそうです。しかし、すぐ世に出せなかったのは、「1980年代から90年代にかけては、そのアイディアは荒唐無稽すぎた」ため。

 時代を経て、分子生物学分野での発見が相次ぎ、フィクションとして成立させる見込みが出てきたこと。プロの作家としての取材力が上がったこと。「これらのおかげで、四半世紀近く温めてきたアイディアをいよいよ小説にすることを決意できたんです」と『本の旅人』(角川書店)のなかで語っています。

 SF作品に冷たいといわれる直木賞。今回、『ジェノサイド』が受賞すれば快挙といえます。7月14日の受賞作発表まで、もう間もなくです。


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