今の20代と30代、どっちがすごい?~『30代から「格差」を逆転できる思考法』
- 『30代から「格差」を逆転できる思考法 (講談社+α新書)』
- 和田 秀樹
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現在の30代は、第二次ベビーブームなどの影響から、決して少なくない「競争」を経験してきた世代。それだけではなく、バブル期も知らず、就職時には氷河期を迎え、「貧乏くじ世代」ともいわれています。
しかし、逆に考えると、それなりの大学に入り、どうにか正社員として会社に入社できた人は、今の20代とは比べて知的レベルは高いといえるのもしれません。そして、競争能力や自分を律する能力もある人が多いと精神科医の和田秀樹氏はいいます。また、行きたかった大学に行けなかった人や、非正規雇用に甘んじている人であっても、基礎学力のレベルは高い人が多いとも。その証拠の一例として、1980年代の日本の中学生の数学力は世界一だったことを挙げています。
一方、ゆとり教育の影響や少子化で競争相手が少なかった20代は、アジア諸国に学力で抜かれ、競争経験に乏しいから、ひ弱な人間も多いと和田さん。
EQ(emotional quotient)という言葉があります。これは日本では「情動指数」や「感情指数」と訳され、もともとは感情面の知性を『TIME』誌がIQに対抗してEQと紹介したものです。EQ能力とは、1.自分の感情を知る 2.自分の感情をコントロールする 3.自己を動機づける 4.他者の感情を知る 5.それによって人間関係をうまくいかせられる、といった能力のこと。心理学の世界では、EQは人間の知能や社会的成功の重要な要素と見なされています。これらの能力が低い人は出世できないというのは、昔から「和」や「情」を重んじてきた日本社会において、当然ともいえます。
EQ能力は競争的な環境では損なわれると思われがちですが、たとえば仲間と情報を交換して受験や就職に成功する体験をしていれば、意外にもその競争経験こそがEQ能力の向上につながったりします。また、感情コントロール能力がないと、厳しい受験競争、とくに就職競争は勝ち抜けません。30代はそのEQ面でも有利だと和田さんは指摘します。
第二次ベビーブーム世代は、いろいろなことで勝ったり負けたりしているので、「一流大学に入れなかったけど、商売で儲けてリッチになればいい」「出世では同僚に先を越されたが、難関の資格試験に合格して見返してやろう」といった、気持ちを強くもっている人が多いのかもしれません。逆に、そうした「生きる力」は、今の20代には欠けています。無競争環境で育ったために、自分の取り柄を知る機会も、競争に勝って自信を持つ機会も奪われてしまいました。
ちょっとしたつまずきで挫折し、そのままズルズル「負け組」に落ちていく若者も少なくないといいます。不況による社員同士のサバイバルが激化しているいま、競争力のない人間は、企業に容赦なく切り捨てられてしまう現実があります。その意味でも、30代は20代の若者よりも、はるかに有利と考える人もいるでしょう。
4月から新入社員として働く20代も、後輩を持つ30代の中堅どころの社員も、そのような視点で一度、自分を振り返ってみることも大切なのかもしれません。