連載
杉山すぴ豊の、アメキャラ映画パラダイス

第91回 なぜ『ゴジラvsコング』であって『ゴジラvsキングコング』ではないのか?

『ゴジラvsコング』 2021年5月14日(金)より全国東宝系にてロードショー

日本では5月14日(金)公開の『ゴジラvsコング』。試写を観たのですが本当に期待通りの怪獣バトル・アクション映画に仕上がっていました! とにかくこの作品はゴジラとコングの戦いをいかにかっこよく、面白く見せるかであり、そこに特化したエンタテインメントになっています。

一応、この作品は
2014年の『GODZILLA ゴジラ』(新ハリウッド・ゴジラ)、
2017年公開の『キングコング:髑髏島の巨神』、
2019年公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と世界観を共通する
モンスター・ヴァース第4弾にあたります。

このモンスター・ヴァースを仕掛けるのはレジェンダリー・ピクチャーズという会社。ここは『パシフィック・リム』や万里の長城を描いた歴史劇と思いきや怪獣映画だった『グレートウォール』を作っています。もしあなたがアメコミ・ヒーロー映画好きならマーベル・スタジオかDC、ホラー映画好きならブラムハウス、怪獣映画好きならレジェンダリー・ピクチャーズで働きたいと思うのでは?(笑)

さてモンスター・ヴァースの世界観では、地球の本当の支配者は太古の昔から存在するタイタン(巨神)と呼ばれる怪獣たち。彼らは地下に潜っていたが復活し、人類は怪獣たちと共存せざるを得ない世界を迎えた、というのが基本設定です、怪獣の中でも王者はゴジラなのですが、そのゴジラには永遠のライバルがいた。それがコングというわけです。今までの作品をみていなくてもこの作品だけで十分楽しめます。

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ゴジラはアメリカでも大変人気があり東宝の怪獣映画は多く輸出されたようです。アメリカでのゴジラ人気を裏付けるのは、1977年から79年にかけてマーベルでコミック化されていたこと。僕の持っている11号ではそれこそコングを思わせるような巨大な猿人怪獣やシールドと戦っています。また23号ではNYに上陸したゴジラをアベンジャーズが迎え撃つのです! 1978年には『原始家族フリントストーン』や『チキチキマシン猛レース』等で有名なハンナ・バーベラ・プロダクションによって子ども向けのアニメ・シリーズが作られています。

ゴジラがなぜアメリカでウケたのか? 諸説あるのですが、そもそもアメリカ人にとってモンスターというとドラキュラだったりフランケンシュタインの怪物だったり怪人がイメージされる。で、ゴジラみたいな存在はジャイアント・モンスターというのですが、その多くが恐竜だったり巨大化した昆虫だったり、という巨大生物の延長か、あるいはファンタジーに出てくる巨大ドラゴンのような物が多い。後者の場合は物語の主人公はあくまで竜や巨人を倒す騎士だったりするわけですから、怪獣=主役ではない。こうした中<熱線を吐き人類の攻撃に対してほぼ不死身>という時点で単なる巨大生物ではなく超存在、シリーズ後半に至っては<悪い怪獣とも戦う>という主役感を持ったキャラというのは新鮮かつ魅力的だったのでしょう。だからマーベルやハンナ・バーベラが<ヒーロー物>としてゴジラを作った、と言うのも十分納得できます。

僕は子どもの頃、父の持っていたアメリカの雑誌でゴジラが大きく取り上げられた記事をみて、ちょっと誇らしい気持ちになりました。大好きなゴジラが世界でも人気というのが嬉しかったのです。と、いいつつ僕はコング派です(笑)1933年に公開された『キング・コング』でデビュー。それまでも恐竜や竜の出てくる映画はありましたが、ジャイアント・モンスター物はこの作品によって確立したといっても過言ではないでしょう。先に<アメリカの怪獣映画は巨大生物ものが多く、ゴジラのような超存在は少なかった>と書きました。そういう意味ではコングも<巨大な猿>ではありますが、単なる既存の生物の延長におさまりきらない魅力があります。特に1933年の『キング・コング』は<大きな猿>ではなく<ゴリラの姿をした巨神>ともいうべき怖さ、
カリスマ性の持ち主です。

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『キングコング:髑髏島の巨神』が公開され時、監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツ氏にインタビューする機会がありました。その時監督は「コングはゴリラではなくゴッド、モンキーではなくモンスター」として描いてことがわかりました。まさにこれがコングも今でもファンの間で愛される理由でしょうか?今回の『ゴジラvsコング』はゴジラ映画であると同時にコング映画です。『キング・コング』(33)、『キングコング対ゴジラ』(62年の東宝製の怪獣映画。傑作です)、『キングコングの逆襲』(67年の東宝製の怪獣映画)、『キングコング』(67/当時の東映動画が参加のアニメ・シリーズ)、『キングコング』(76/あまり評判よくないらしいですが僕はとても好きです)、『キング・コング』(05/ピーター・ジャクソン版)へのオマージュがいくつもあります。なおコングは作品によって『キング・コング』『キングコング』と中グロのありなし表記が混在します。

さてここまで書いて、おや?と思われる方もいるでしょう。今回なぜ『ゴジラvsコング』であって『ゴジラvsキングコング』ではないのか? 62年の『キングコング対ゴジラ』のリメイクではない及びこれとの差別化ということもあるし、もしかするとキングコング映画は様々な会社が過去作っているので商品化等の商標上の配慮かもしれませんが、こういう<大人の事情>はさておき、物語的にはコングがまだキングではないからです。

つまりゴジラは現状、前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で、暫定的に怪獣の王=キング・オブ・モンスターズですがまだコングと戦っていない。コングは髑髏島限定の王。だから『キングコング:髑髏島の巨神』とはいえますが(もっともこの作品の原題も Kong: Skull IslandでKINGと入っていません)
ここでゴジラを倒すことが出来たなら、晴れてキングなコングとなるわけですね(笑)
果たしてその勝敗は? お好きな怪獣のセコンドになったつもりでこの世紀のタイトル・マッチをお楽しみください!

(文/杉山すぴ豊)

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『ゴジラvsコング』
2021年5月14日(金)より全国東宝系にてロードショー

監督:アダム・ウィンガード
出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗 旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル
配給:東宝

原題:Godzilla vs. Kong
2021/アメリカ
公式サイト:https://godzilla-movie.jp/
(C)2021 WARNER BROTHERS ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

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杉山すぴ豊

アメキャラ系ライターの肩書きで、アメコミ・ヒーロー映画やSF、モンスター映画についての伝道活動を、雑誌、TV、WEB等で展開。 映画「アメイジング・スパイダーマン」「アベンジャーズ」の劇場パンフレットにも寄稿しています。映画「サラリーマンNEO劇場版(笑)」にCMクリエーター役でなぜか出演。 AOL等でもコラム展開中。
また人気と評判の(笑)ブログはこちら http://supi.wablog.com/

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