連載
杉山すぴ豊の、アメキャラ映画パラダイス

第26回 ティム・バートンの『バットマン』と「ティム・バートンの世界」展

「ティム・バートンの世界」展は、現在、森アーツセンターギャラリー(六本木)で開催中!
「ティム・バートンの世界」展は、現在、森アーツセンターギャラリー(六本木)で開催中!

今年はバットマン75周年ということで、日本でも数々の企画が実施されています。
と同時に、ティム・バートンの『バットマン』(1989)も公開から25年の記念すべき年なのです。そして、ちょうどいま東京・六本木ヒルズで「ティム・バートンの世界」展が開催されており、今回はティム・バートンの『バットマン』と「ティム・バートンの世界」展についてお話したいと思います。


①『バットマン(89)』の主役は、ジョーカーではなくバットマンだった。

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『バットマン・リターンズ』のキャット・ウーマン、ペンギンのアート 〜「ティム・バートンの世界」展より

先日、大画面で『バットマン』と再開する機会がありました。よく言われることですが、ティム・バートンは、バットマンより、むしろ敵の怪人の方に思い入れがあって、だから『バットマン・リターンズ』(1992)は、ペンギンやキャット・ウーマンが主役の映画なのです。彼らは、他のバートン映画のキャラに相通じる、アウトサイダーだから。

じゃあ『バットマン』は? この作品、ジャック・ニコルソン演じるジョーカーのインパクトが強すぎることもあって、"ジョーカーが主役"とも言えるのですが、実はブルース・ウェインの悲しみと狂気を、ティム・バートンはちゃんと描いて、あくまでバットマンが主役の映画なのです。すごいトラウマを背負った人間が、普通の格好で生きていけるわけがない、、、バートンは、バットマンの物語をそう解釈しているのです。だからブルースは「やめようと思ったが、やめられなかった」と言います。これは、犯罪との闘いを「生涯の決意」としている男なら言わないセリフです。
「やらなければならない」からじゃない、「やめられない」んです。

バートンが、世の反対を押し切り、マイケル・キートンというコメディ系の役者をブルース役に起用した理由は、"コメディアンこそが狂気と怒りを表現できる"だったそうです。改めて見直して、キートンの目は、終始笑っていません。

ただバートンは、この悲しすぎる男に、2つの救いを用意していました。1つは、原作の設定を大胆に変え、両親の仇をちゃんととらせてあげたこと、そして、もう1つは、この先 ブルースが恋人と結ばれることを暗示したラストです。後者の方は、続編が決まったので、あのあと2人は別れたことになりますが、もし『バットマン』だけで終わっていたら"ハッピーエンド"なのです。

バートンと『ダークナイト』3部作のノーランの違いは、ゴッサム・シティの描き方でしょうか? ノーランが、ロケを重視し、リアルな街=ゴッサムに対し、バートンはセット重視の紙芝居的というか箱庭です。だからこそ独特の世界観が生まれ、怪人たちによる濃厚な舞台劇がくりひろげられます。その色彩と毒気は、25年たっても色褪せることはありませんでした。傑作です!


②ティム・バートンの心の中を散歩する、素敵なイベント!

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幻の『スーパーマン・リヴズ』のコーナーから 〜「ティム・バートンの世界」展より

「ティム・バートンの世界」展にお邪魔してきました。まず最初に、これは"ティム・バートンの映画展"ではりません。だから歴代バートン映画の小道具とか衣装が並んでいるというミュージアム・タイプのイベントではありません。
でも! ティム・バートンがこうした映画のために用意したスケッチ、コンセプト・アートの類がズラっと素敵に展示され、本当に究極の異世界=ティム・バートンの心の中、に迷い込んだかのような、楽しくて、ゴージャスなアート空間なのです。

彼の描く異形のキャラクターたちは、不気味ですけど、そこにペーソスがあり、ちょっと応援したくなります。
彼の生み出す異世界は、太陽が似合わない、うすぐらい感じだけれど、なぜかここちよさがあります。
それを改めて体感できる、至福の時間・空間です。

個人的には、ニコラス・ケイジ出演で、彼が作るハズだった『スーパーマン・リヴズ』の
アートや、登場する予定の悪役、生きている電子頭脳ことブレイニアックのミニチュア・プロップを目にすることが出来て感激でした。特に、このイベントに来る前に、改めて『バットマン(89)』を観ていただけに、スーパーマンという、"陽"のキャラクターをティム・バートンの解釈で描いていたら、どんなお話になったんだろうか?と妄想してしまいました。

六本木ヒルズが(大阪でも開催されます)、不思議の国になっています。
ウォンカのチョコレート工場見学が当たったつもりで、ぜひ迷い込んでみてください。
おすすめです!

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ティム・バートンの世界(東京開催)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
期間:2014年11月1日(土)~2015年1月4日(日)
入場料:一般1,800円 高校生・大学生1,300円 子供(4歳~中学生)800円 ※価格は全て税込
主催:フジテレビジョン/東京新聞/WOWOW/森アーツセンター
公式HP:http://www.tim-burton.jp/

ティム・バートンの世界(大阪開催)
期間:2015年2月27日(金)~ ※予定
会場:イベント・ラボ(グランフロント大阪 北館ナレッジキャピタルB1F)
住所:大阪府大阪市北区大深町3−1

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杉山すぴ豊

アメキャラ系ライターの肩書きで、アメコミ・ヒーロー映画やSF、モンスター映画についての伝道活動を、雑誌、TV、WEB等で展開。 映画「アメイジング・スパイダーマン」「アベンジャーズ」の劇場パンフレットにも寄稿しています。映画「サラリーマンNEO劇場版(笑)」にCMクリエーター役でなぜか出演。 AOL等でもコラム展開中。
また人気と評判の(笑)ブログはこちら http://supi.wablog.com/

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