【映画を待つ間に読んだ、映画の本】第44回『謎の円盤UFO完全資料集成』〜1970年に1980年を舞台として作られたこのSFシリーズが、47年後の現在でも熱烈に愛される理由。
- 『謎の円盤UFO 完全資料集成』
- スティーブン・ラリビエー,岸川 靖
- 洋泉社
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●永遠の輝きを放つ、名作SFシリーズの全貌。
今回だけ「TVドラマを待つ間に読んだ、TVの本」とすべきだろうか。いや、このシリーズだけは別格なのである。『謎の円盤UFO』。1970年から71年にかけてイギリスで、同年日本でもオンエアされたこのシリーズだが、我が故郷では当時日本テレビ系列のネット局がなかったので、シリーズ全26話をすべて鑑賞出来たのは、その翌年のことだったと記憶している。当時フジテレビ系列局のテレビ静岡が、月曜日から金曜日までの帯ワクで、海外のSFドラマ・シリーズを連続オンエアしてくれたお陰だ。『宇宙大作戦』(現在の『スター・トレック』)も、このワクでオンエアしていたし、『宇宙家族ロビンソン』なども見たような気がする。
あれから40年以上の歳月が流れたとは思えない。今見てもこのシリーズは新しい。斬新にして先鋭的だ。それはストーリーのリアルさもさることながら、物語の舞台となる1980年という、制作当時からすれば10年後の時代の描写が優れているからだ。続々と登場するウェポンやガジェット類、地球防衛のための基地やその組織形態。登場人物のファッションや設定に至るまで、当時の目から見た1980年という未来が描かれており、実際に1980年が過去になってしまった現在でも、その輝きは世界中の視聴者を魅了してやまない。まさに永遠の名作だ。
『謎の円盤UFO完全資料集成』では、その書名の通り、この名作SFシリーズに関するあらゆる資料とメイキング・エピソード、ストーリー解説などを網羅している。
●テキストとビジュアルの充実ぶりがうれしい。
これまでオンエア終了から現在に至るまで、何種類かの『謎の円盤UFO』の研究書が発行され、そのいくつかは日本版として翻訳されたが、資料的価値や内容面においては、本書が極めつけと言えるだろう。スティーブン・ラリビエーによる永年の研究の成果がこの一冊に収録されているのだが、この種の本の性格として、テキストもさることながらビジュアルにも力点が置かれている。写真の類いはデジタルで補正されているようで、総天然色(古い!)と見間違うばかりの美しさだ。とりわけ今回初めて目にするメイキング写真の多さには驚きを禁じ得ず、特撮がらみのカットを見て「こんな風に撮影したんだ!?」と、今さらながらのワクワク感が甦ってきた感じ。
47年前も現在でも、セクシーでチャーミングなオーラを放つムーンベースのおねいさんたち、そして麗しのバージニア・レイク大佐(今やカンバーバッチのママとして有名なワンダ・ヴェンサム!!)のスチル写真やメイキング写真の充実ぶりは、うれしい限り。
●スカイダイバーか? ムーンベースのおねいさんたちか?
実を言うと本書の洋泉社側の編集担当は、拙著『映画宣伝ミラクルワールド・特別篇』も担当した人で、この人から聞いた話では、「最初はムーンベースのおねいさんたちの写真は、もっと少なかったんです!! その代わりにスカイダイバーの写真ばかり多くて!! 表紙だってエリス中尉じゃなかったんですよ。それを"これでは売れませんっ!!"と、写真を変えさせたんです!!」という。
ううむ・・・書籍にどんな写真を選んで掲載するかは、編集者の判断に委ねられているとはいえ、そうかと言って編集者の趣味性だけで突っ走るのは感心できない。スカイダイバーの写真かムーンベースのおねいさんの写真たちかと、二者択一を迫られれば筆者としては後者をとるが、圧倒的に前者を支持する人もいるだろうし。このあたりの判断は難しい。
日本版の企画・構成・編集担当は『スター・トレック』の大家・岸川靖さん。あえて『謎の円盤UFO完全資料集成』の内容に希望を言うならば、最後にある「日本語版制作と商品化」のような章に、もっとページを割いて欲しかった。日本でオンエアされた際の関係者への取材やインタビューなどは、『スター・トレック』を通して豊富な人脈を形成している岸川さんならば、充分に可能なはずだ。それが実現して、初めて「あの時TVで見た、あのシリーズ」という親近感を日本の視聴者=読者が持てるはずだ。
そしてもうひとつ、希望がある。先の洋泉社側編集者によれば、「まだまだ掲載していない、ムーンベースのおねいさんたちの写真はたくさんある」とのことだから、ここはひとつ「ムーンベース写真集」をオールカラー・大判の書籍で実現してもらいたいのだ。未だ日本にも、『謎の円盤UFO』をこよなく愛する者たちがたくさんいるのだ!!ということを世界中に知らしめようではないか!!・・・って、偏っているかなあ・・。
(文/斉藤守彦)