メジャーデビューシングル『RUN and RUN』のMVが各方面で大絶賛。HIP HOP系アイドル「リリカルスクール」が、今度は映画に本人役で初主演! タイトルは『リリカルスクールの未知との遭遇』。宇宙からやってきた地球外生命体との交流の中でそれぞれが成長を遂げていく、ファンタジックでSFな青春ムービーです。
監督を務めたのは、本作が商業映画初監督となるデモ田中さん。井口昇監督作の常連俳優であり、最近では『進撃の巨人』の巨人役でも知られるデモ監督に、熱すぎる制作秘話を伺いました。
──普段は俳優としてご活躍されていますが、今回、監督をすることになった経緯はどんな感じでしょうか?
「今回の映画は、僕の持ち込み企画なんです。昔からの知り合いだったキングレコード(※)のプロデューサーに、リリカルスクールでアイドル映画を作りたい!と、何パターンかの企画書を持って行ったのが始まりです。その後、かなりの紆余曲折を経たあと、リリスクのプロデューサーさんもプロットを見て気に入ってくれて。この内容ならぜひやってみたい!と言ってくれたんです。熱くなりましたね。普通はもっと有名な監督じゃないと......とかあるじゃないですか! 僕には商業映画の実績もなかったですが、魂で応えてくれたんです! ただ、その代わり、年内に撮り終えてくれって言われました。話が決まったのが10月頭で、脚本もできてない状態だったんですが(涙)! やってやろうじゃねぇの!(『狂い咲きサンダーロード』より)」
※リリスクが今年1月より所属
──撮影ではどんなご苦労がありましたか?
「撮影が年末だったので、メンバーのスケジュールがなかなかとれなくて。本業は歌手ですから、ちょうどライブが寿司詰めに入ってる時期でしょう? ユニットとしても、ちょうどメンバーのhinaさんが卒業したり、新メンバーのhimeさんが高校生で期末試験があって忙しかったり。ちょいちょい、いるはずなのにいない。いるはずなのに、段ボールかぶってるとか。そういうことでなんとなく乗り切っていったんです。とにかくいろんな要素をぶち込んだ作りにしたかったので、撮影しなきゃいけない分量がものすごく多かったんです。メンバーの出演シーンは5日で全部撮ったんですが、撮影中は早口でトイレに行くヒマもなければ無駄話するヒマもない。もう全然、和やかな雰囲気でゆとりある撮影とかじゃなくて。名前が急に出てこなくなって、yumiさ......あ、あ、aaaaaaamiさん!みたいになったり。そういうぐちゃぐちゃの中を、最短コースで突っ走っていった。そんな撮影でしたね」
──撮影していくなかで、メンバーの成長を感じる瞬間はありましたか?
「正直ですね、ほんとにメンバーが忙しくて、撮影直前まで会えなくてですね。先に渡していた台本も、そこまで作り込んだものじゃなかったので、最初は想像が追いつかないって言われて。みんなの頭にクエスチョンが浮かんでるのが見えました(笑)。さらに、himeさんは加入したばかりで、この映画がみんなでやる初めての仕事。転校生のような馴染んでない雰囲気がありました。だから最初は台詞を読んでも、なんだかみんなふわふわしているような感じで。それが、全員のシーンをやった時に、急に台詞に気持ちいいリズムが生まれていったんです。やっぱりチームワークすげーなって思いましたね。いろんなシーンをバラバラに撮影しましたが、非力な女の子たちが目覚めて、みんなで力を合わせて成し遂げていく、という一つの流れをきっちりと表現してもらえたなと、編集をしながら驚きました。撮影を通じてどんどんメンバーも馴染んでいきましたし、himeさんが最初、転校生のような感じで入ってきたことも、映画にとってプラスに働いたと思いますね」
──ちなみにデモ監督は、もともとリリスクのファンだったんですか?
「彼女たちのマネージメントをしている一人が、昔からの友人でして。かつて、一緒に自主映画を作ったりしていた仲間なんです。で、リリカルスクールの立ち上げの頃から情報交換をしていて、時々手伝いでライブのVTRを撮りに行ったりもしていました。そういう中でリリスクのライブを観るたびに"新しい流れが今ここにある!"と思わされるような、すごいエネルギーを感じていました。とてもクォリティが高くて、アイドルというよりもアーティストを見ているような感覚。そして、楽曲が単純に気持ちいいんです」
──出来上がった映画も、不思議にハマる気持ちよさがありましたね。
「リリスクの楽曲もいい意味で中毒性があるサウンドですし、クセになる映画というのは、目指していたところでもあるんです。音にもすごくこだわっているので、劇場でぜひ観てほしいですね。大スクリーンと大音量の劇場で観ると、映像体感が全然違うと思いますよ」
──第二の主役ともいえる地球外生命体のスペース・バンバーダこと"バムさん"、キモかわいかったです。
「バムさんは、女の子たちの成長を導いていくポジションのキャラクターなんですが、かわいらしくてちょっと嫌な奴で、ぶっきらぼうな存在にしたかったんです。モチーフはアフリカ・バンバータ。宇宙からヒップホップを広めに来た宇宙人という設定です。造形に関しては、アルフやテッドやグレムリンみたいな、アメリカンなパペットも考えましたが、やっぱりリリスクの音楽は日本のHIP HOPだから、馴染みのある和のフレーバーを入れたいなって。ロボコンとか、ドリフの人形劇でいかりや長介ややってた三蔵法師とか、NHKの子ども番組感とかですね。造形師さん曰く、最終的にはオレの顔に寄せたって言ってました。下唇がちょっと突き出てて、ちょっとぶさかわみたいな? ダサ渋みたいな? 声は『ドラゴンボール』の魔神ブウ役で有名な塩屋浩三さんにお願いしています」
──リリスクのファンだけでなく、よりいろんな人に楽しんでもらうために意識したことはありますか?
「若い頃にオールドスクールのHIP HOPにハマッていましたし、やはり"HIP HOP"という要素にはこだわりました。ただし僕自身もそこまでコアではないので、スーパーバイザーとしてM.C.BOOさんに協力してもらいました。劇中には、スチャダラパーのANIさんやTOKYO No.1 SOUL SETのBIKKEさん、ZEN-LA-ROCKさんなど、現役のベテランアーティストの方に出演してもらったり、HIP HOPの豆知識を盛り込んだり。HIP HOPに対する愛を、存分にフレーバーとして突っ込んでいきました。そして、アイドル映画ではあるんだけど、自分自身が好きなコメディ的な要素やマッドでカルトな要素など、変化球な表現にもこだわりました。彼女たちの最大の武器であるライブをはじめとして、ファンが観たいところを全部大事にした上で、遊びの要素もたくさん入れていきました」
──ところで、デモ監督が個人的にお好きな映画って何ですか?
「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか、大好きですね! あとは、マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』のようなバディものも好きです。熱く、ゆさぶられるような映画が好きなんです。そうそう、実はこの映画を作るにあたって、見直した映画があるんです。『ブルース・ブラザーズ』。ミュージシャンがたくさん出てきて、全面に音楽があって、そして何より、誰がみてもわかる。大人でも子どもでも楽しい。そんな映画にしたいという想いがあったんです。あと、なぜか『ロッキー』も見直しましたけど。それから、子どもの頃から大好きなレイ・ハリーハウゼンのフレーバーも意識しながら作りました。レイ・ハリーハウゼンは、今観てもたまらないですよね。特に好きなのは『シンドバッド七回目の航海』です」
──ありがとうございました! 映画のヒットをお祈りしてます! 最後にひと言お願いします。
「僕自身、俳優としてもジャンルムービーや異端な作品に参加する中で、ものすごく強烈な個性を持った監督たちと仕事をしてきました。その人たちの背中を見ていると、特攻魂じゃないですけど、"オレが世界を変えてやるんだよ"みたいな勢いを感じるんです。口に出してはいわないですけどね。かっけーな!っていつも思っていたので、そのテンションだけは継承して、暑苦しい感じでぐいぐいやってました。気合い入れろー! 奇跡を起こせー!って。パーティムービーって宣伝文句になっていますが、ほんとにパーティみたいな映画になっていると思います!」
(取材・文/根本美保子)
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『リリカルスクールの未知との遭遇』
5月28日(土)よりシネマート新宿、6月18日(土)よりシネマート心斎橋、6月25日(土)より名古屋シネマスコーレにて公開。以降、全国順次公開!
監督・編集・共同脚本:デモ田中
主演:リリカルスクール<ayaka、mei、yumi、ami、minan、hime>
配給:日本出版販売
2016/日本映画/75分
公式サイト:http://ls-movie.com
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