リベンジに燃える加藤桃子女王の自戦記

左/加藤桃子女王、右/近藤誠也五段 撮影:河井邦彦
第67回NHK杯戦1回戦第6局で、近藤誠也(こんどう・せいや)五段と対局した加藤桃子(かとう・ももこ)女王が自戦記を寄せてくれた。本稿では、その中から序盤の展開を紹介する。

※段位、記録は放送時のものです。

* * *


■自信を知る

迷わないと決めていた。この道を通るのは3度目だ。初めてスタジオに向かった昨年の夏、坂道で迷い焦った記憶がある。すべてが新鮮だったが不思議と緊張はしなかった。力を出し切れず悔しい。前回準優勝を果たした佐藤和俊六段との初戦を思い出していた。
気づくと笑っていた。私には浅くても経験値があるもんねと。
渋谷駅周辺には詳しくなった。どんな要素であれ、小さな自信の積み重ねは強気の源になると知っている。
リベンジに燃えていた。


■サービス精神

NHK杯の反響は大きい。前回出演時に放送を観(み)てくださった地元静岡の方やファンの方、親戚にもとても喜んでもらえた。
個人的なことを書くと、昨年は公式戦で男性棋士と対局する多くの機会に恵まれたことがうれしかった。早指しでも長時間でも、強い方と対局できる環境は私にとって財産である。
一方、冬には奨励会で降級、続いて女流王座のタイトルを失冠した。しかし、今回の本戦出場女流棋士決定戦を勝ち上がったことが転機となり、奨励会で初段に復帰した。

控え室では兄弟子にあたる佐藤紳哉七段がカツラの調整をしていた。いつもより高級品だそうでクセ毛が手ごわいらしい。
解説は初めてとのこと。珍しく眼鏡もされて、相当に気合いが入っているご様子。私も期待に応えたいと思った。
対局相手の近藤五段とは奨励会在籍が重なっていたためつきあいが長く、湾岸の将棋教室では一緒に講師を務めている。棋風は居飛車党のバランス型で終盤切れ味鋭い印象があり、最近高勝率をあげている。
近藤五段は実は面白くて人気者だ。ビッグマウスなところもあるが根は優しく、物事を冷静に判断することが多い。
さて、3図は角換わり腰掛け銀の流行型。先手の4八金、2九飛型に対して後手は同型にはせず5二金型である。お互いに得意な形でぶつかった。

※投了までの観戦記と棋譜はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2017年7月号より

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