一力遼七段の“本物の証明”

左/張 栩NHK杯、右/一力 遼七段。撮影:小松士郎
第64回NHK杯では、19歳の一力 遼(いちりき・りょう)七段が高尾紳路名人、山下敬吾九段という平成四天王との熱戦を制し、駒を進めてきた。張栩(ちょう・う)NHK杯とぶつかった準決勝 第1局の序盤の展開を、佐藤康夫さんの観戦記から紹介する。
(本文中の肩書・段位は放送時のものです)

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■張が舞い、一力が刺す

今回のNHK杯は順当だったと言えるのではないだろうか。ベスト8の顔ぶれは、過去4年の決勝進出者が見事にそろい、それに実力者の山下敬吾九段が加わった8人であった。ただその中で、最も強烈な輝きを放ったのは一力遼七段である。3回戦で高尾紳路名人に快勝し、準々決勝では山下九段の大石をしとめ、そして準決勝の相手は張栩NHK杯。
この四天王との3連戦は圧巻だったと言うしかない。今回のNHK杯は、まさに一力七段の〝本物の証明〟を印象づけた戦いとなった。
小林覚九段「張さんは布石でいろいろと工夫して複雑に打ちます。それで布石が終わったころには、形勢をよくしようとしています。一力さんはいわゆる本格派で、一気に攻めたてる切れ味が魅力です。きょうの碁は張さんが動き回って一力さんがその隙をつけるかどうかが見どころでしょう」

■張、愛用の布陣

張栩NHK杯が黒番を持ったほうが面白い。機略ある布石を見せてくれるからだ。

 


黒1を打ち下ろしてから、いつものように指をポキポキと鳴らした。そして黒3、5、7と変則に構えた。これが最近愛用している布陣である。
司会の長島梢恵二段が「両者の対戦成績は、張NHK杯の1勝、一力遼七段の3勝です」と話を向けると、解説の小林覚九段は「張さんを相手にして、ちょっと驚きですね。一力さんは入段直後、すでにトップレベルの力を持っていました。碁だけでなく、すべての面ですばらしい棋士です」とたたえた。
左上、白10の二間高バサミに黒11とハサミ返して31のヒラキまでは、張らしいスピード感のある打ち回しである。
小林九段「張さんにこういうふうに打たれると、大抵の人は焦りますが、一力さんは平然としていますね」
右上、黒33のハサミに1図、白1と三々に入るのは黒6までが黒の注文である。白36のカケに2図、黒1から7までと平易に応じるのは、白のほうが“気分よし”だろう。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2017年5月号より

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