茎までおいしく食べられる新感覚のカリフラワー

取材協力・写真提供/トキタ種苗
長い年月をかけて生み出される野菜の品種。そんな品種の生みの親である野菜のブリーダーに、イチオシの品種を教えてもらいます。今月はトキタ種苗の福寿拓哉(ふくじゅ・たくや)さんが「カリフローレ」を紹介してくれました。

* * *

Q これは……カリフラワーですか?
カリフラワーの一種です。茎も食べることから、私たちは「スティックカリフラワー」と呼んでいて、カリフラワーにはない新たな魅力をもつ新顔野菜として展開しています。発売からまだ3年の、新しい野菜です。
Q どういう意図で育種(いくしゅ)したのですか?
じつは、偶然の産物なんですよ。カリフラワーの育種をしているなかで、たまたま茎が伸びる品種が現れて。ゆでて食べたら茎が甘くて、すごくおいしかったんです。「これはいける!」と、一般的なカリフラワーとは別に育種を始め、同時期に確実に茎が伸びるように選抜していきました。
Q 日本でカリフラワーの人気が低迷しているなかで、なぜ育種を?
確かに、日本では1987年をピークにカリフラワーの消費量が減っています。残念ながら、ブロッコリーにとってかわられたんです。でも、我が社はインドにも拠点があり、インドで最も食べられている野菜がカリフラワーなので、海外向けの品種開発は今でも続けています。
「カリフローレ」の発売当初は、本当に人気が出るんだろうかと半信半疑でしたが、すごく反響がありました。
Q 一般的なカリフラワーとは違う魅力とは
一般的なカリフラワーは「食感がモソモソする」と敬遠されるケースが多いんですが、「カリフローレ」はコリコリとした食感で、しかも甘みが強く、苦みが少ないのでお子さんに人気があります。小房に分けやすいので、お弁当にも入れやすいようです。ベーコンや豚肉を巻いてソテーするレシピに、定評があります。
Q 農家さんの評判は?
正直なところ、最初はまちまちでした。当初、「カリフローレ」を1株丸ごとの状態で出荷したところ、「できそこないのカリフラワーはいらない。売れ残って困る」と、お店の人に大不評だったんです。当然ですが、「カリフローレ」の姿を知らない人には、収穫適期を逃して花蕾(からい)がバラけたカリフラワーに見えるんですよね。これを反省して専用の袋を作り、パッケージも含めた展開を始めたのですが、農家さんによっては「袋詰め作業が手間だ」というお声をいただきました。
ただ、一般的なカリフラワーが1株丸ごと収穫するのに対して、「カリフローレ」は1株を3〜4袋に分けて出荷するため、傷んだ部分だけ廃棄すればよいというメリットがあります。Fruit Logistica(※)イノベーション・アワード2014にノミネートされ、海外でもまったく新しいおいしい野菜として認知が広がっています。
Q 今後の展開は?
今はまだ2品種しかありませんが、全国的、ひいては全世界的に生産・流通量をふやすために、品種のラインナップを拡大中です!
※ 国際果実・野菜マーケティング見本展。毎年2月にドイツのベルリンで開催されている。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2016年2月号より

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