夜咲く花があるのはなぜ?

花の中には、太陽が隠れてしまった夜に咲く花もあります。東京大学総合研究博物館特招研究員の大場秀章(おおば・ひであき)さんにその理由を教えてもらいました。

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夏は暑く、できれば外での活動は控えたい気分になりますね。熱帯ではさらに日中の気温は上がり、野外での活動はますます困難になります。昆虫はどうでしょうか。日本など温帯に多いハチやハナアブなどは、熱帯ではそもそも種数や数が少ないこともあり、日中に花にやってきそうな昆虫はぐっと少なくなります。また熱帯では住んでいる人々の多くが日没後に活動を開始するように、昆虫も夜行性の仲間が昼行性の仲間よりも数を増します。そのため、花粉を運ぶ昆虫が多い夜に花を咲かせるのです。

■夜咲く花は香りも強い

また、夜咲く花は強い香りを発するものがあります。夜を照らす自然の光は月です。明るく感じても太陽とは比べものにはならず、光が当たらないところにあるものは見えないので、花は色のちがいで自己アピールをしたり、ほかのものと区別させることもできません。そこで頼りになるのが、香りなのです。とくに熱帯の花は強い芳香を発します。庭によく植えられるローズアップルなどフトモモ科やそのほかの花から発せられる強い芳香は、町や村を包み込みます。温帯でもカラスウリやクサギなど夜咲きの花は強い香りを発することが知られています。
また、かたちにも特徴があります。夜行性の昆虫を代表するガの仲間は長い口吻(こうふん)をもち、それを開いて花から蜜を吸い取ります。ガに花粉の媒介を託す花では、花は長い筒状となり、その中に蜜を蓄えます。雄しべと雌しべの長さも、訪れたガの頭に花粉が取り付くように位置が調節されているのです。
■『NHK趣味の園芸ビギナーズ』7月〜9月より

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