個人所有の国宝もある!?

国宝というと、所蔵先はお寺や美術館ばかりと思いがちだが、実は個人や企業も含まれるのだとか。日本美術を主な領域とするライター、エディターの橋本麻里 (はしもと・まり)さんに聞いた。

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例えば17 世紀の京都で創業、お香や書画用品の専門店として知られる「鳩居堂(きゅうきょどう)」は、《伝藤原行成(ふじわらゆきなり)筆仮名消息》を所蔵しているし、旧大名家の当主などが先祖伝来の宝物として受け継ぐものもある。例えば愛知県の《犬山城(いぬやまじょう)》は、平成16年(2004)まで尾張徳川家筆頭家老だった成瀬(なるせ)家の個人所有だったが、入場者収入が減り、相続税も莫大なことから財団法人を設立、財団法人「犬山城白帝文庫」に所蔵先を変え、13代目の成瀬淳子さんが理事長となって、保存と広報に努めている。またやはり個人所有で、北宋(ほくそう)最後の皇帝・徽宗(きそう)筆の作品として、室町時代から格別に大切にされてきた《桃鳩図》も現在個人蔵。だが「10年に1度、1週間のみ公開」という所蔵主の方針により、この20年では平成16年、根津美術館での「南宋絵画 才情雅致の世界」展、平成26 年(2014)、三井記念美術館での「東山御物の美」展にのみ、それぞれ出展されている。
■『NHK趣味どきっ! 国宝に会いに行く 橋本麻里と旅する日本美術ガイド』より

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