現役猟師が綴る、自分自身が奪った「いのち」の大切さ

新潮社
853円

"僕は大あわてでナイフを取り出し、心臓をひと突きにしました。「ゴボッゴボッ」と傷口から血の噴き出る音とともにイノシシは絶命しました。あたりは静まり、イノシシの口と血が噴き出す傷口からゆらゆらと湯気があがっていました"

 こちらは京都大学在籍中に狩猟免許を取り、先輩猟師から伝統の「ワナ猟」を学んだ千松信也さんが人生で初めて念願のイノシシを獲ったときの回想シーン。本書『ぼくは猟師になった』では、千松さんが猟師になった経緯や退屈しない山での狩猟生活を紹介しています。

 千松さんはお金を稼ぐ為ではなく、自分たちで食べる分の肉は自分自身で調達したい、との思いから学生時代から現在に渡って狩猟活動を行っているそう。獲ってきた肉をみんなに食べて貰う喜びを知ったのは大学の寮に入っていたころのこと。猟師生活で初めて仕留めた獲物で"シカ肉大宴会"をしたときの様子をこう綴っています。

「この日、僕は生まれて初めて自分で獲物を殺し、解体してその肉を食べました。(中略)集まってくれた友人たちがおいしそうにシカ肉を頬張り、焚き火を囲みながらにぎやかに談笑する様子が、強く印象に残っています。この日は僕の狩猟人生の中で忘れられない重要な一日になりました」(本書より)

 本書ではワナにかかったシカやイノシシを自らの手によって絶命させ、どのように解体していくのかという過程が写真も交えて紹介されています。こうした"生々しい"文章や写真を目にすると、その残酷性に嫌悪感を覚える人もいるかもしれませんが、私たちの食卓に上るおいしい肉料理が、どのような経緯で「準備」されているのかを、改めて教えてくれます。

 千松さんはあとがきでこんな風に述べています。

「自分が暮らす土地で、他の動物を捕まえ、殺し、その肉を食べ、自分が生きていく。そのすべてに関して自分に責任があるということは、とても大変なことであると同時にとてもありがたいことだと思います。逆説的ですが、自分自身でその命を奪うからこそ、そのひとつひとつの命の大切さもわかるのが猟師だと思います」(本書より)

 飽食と言われている今の日本で私たちはどう食べ物と向き合っていくべきなのか。本書を読みつつ、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム

  • 編集長:酒井若菜
    marble
    女優の酒井若菜が編集長となり、女性たちだけで新たに創刊するWEBマガジン『marble』。
  • 著者:ダンカン
    ダンカンの『人生は落書き・・・さ』
    たけし軍団のダンカンさんしか語れないエピソードからご自身の身辺日記まで、徒然なるままお届けさせていただきます!
  • 著者:髭男爵 山田ルイ53世
    髭男爵 山田ルイ53世のメールマガジン「貴族のメルマガ」
    芸人・髭男爵が毎週1回にお届けするメールマガジン。メールマガジンでありながら、テキストのみならず、髭男爵の音声コンテンツなどをお届けしてまいります。
  • 著者:かもめんたる
    週刊かもめんたるワールド
    メールマガジンでありながら、もはやテキストにこだわらず映像と音声で彼らのコント、コラム、撮り下ろし映像をお届けしてまいります。
  • 著者:エレキコミック
    エレキコミックの「エレマガ。」
    完全スマホ対応の「観る・聴く・読む」全部入りハイブリッドメールマガジン。ここだけの彼らの秘蔵映像、コラム、トークなどなど。
  • 編集長/著者:水道橋博士
    水道橋博士のメルマ旬報
    水道橋博士が「編集長」に就任して、過去、メルマガ史上に無い規模と内容と熱量で送るメールマガジン。
  • 著者:プチ鹿島
    プチ鹿島の思わず書いてしまいました!!
    「時事芸人」プチ鹿島が圧倒的なキレとコクで「メルマガ芸人」も目指す毎週更新のコラム集。
  • 著者:マキタスポーツ
    マキタスポーツの週刊自分自身
    メジャーとマイナーの境界にいる僕は今、自らを実験台としてリアリティショーを生きる。他じゃ絶対書かないとこまで、踏み込む。マジで。
  • かもめんたる
    かもめんたるの映像コンテンツ
    かもめんたるの映像をネットでまるっと楽しむことができる、動画コーナー! 閲覧有効期限なし1500円(税込)と「週刊かもめんたるワールド」定期購読者価格700円(税込)の2つからお選びいただけます。
  • エレキコミック
    エレキコミックの映像コンテンツ
    エレキコミックの映像をネットでまるっと楽しむことができる、動画コーナー! 閲覧有効期間が1ヶ月間(31日間)の500円コースと期限なしの1000円コースの2つからお選びいただけます。
  • 著者:萩原智子
    萩原智子『魂のファイトめし』
    元水泳メダリストの萩原智子さんが毎回いろんな一流アスリートと"食事"をテーマに対談していくメールマガジン。
  • » 有料メルマガ一覧