実は100年の歴史! 一般化したデジタル3D技術を巨匠・ゴダールはどう活用したのか

ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ
『ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ』
佐々木 敦
新潮社
2,700円(税込)
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『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『オデッセイ』『ザ・ウォーク』、これらはすべて、3D版が公開されている現在上映中の映画です。2009年に『アバター』が公開されてから早7年。今や臨場感のある3Dは、映画興行になくてはならないものになりました。

 しかし100年近く前、すでに3D映画がつくられていたと聞けば、驚く人の方が多いのではないでしょうか? 1月に発売された批評家・佐々木敦さんの書籍『ゴダール原論』には、次のような事実が書かれています。

「未だサイレント時代の一九二二年に、早くも史上初の3D映画と言われる『The Power of Love』が製作されている。初期の映画はアトラクション的な意味合いが濃かったわけだが、3D=立体映像=飛び出す映画も、そうした趣向の一つとして発明され、折りに触れて製作されてきた」

 なんと、無声(サイレント)映画の時代から3D映画は存在したという驚きの事実。これも、人々が単純に映像を楽しむだけでなく、臨場感を求めていたことの証左といえるでしょう。

 さらに本書には、3D映画に関する次のようなエピソードも。

「一九五〇年代には一時的なブームの様相を呈し、周知のようにアルフレッド・ヒッチコック監督が『ダイヤルMを廻せ!』(1954年)を3Dで撮っている(ヒッチコック自身、作品としても3D映画としても必ずしも成功作ではなかったと思っているようだが)」

 50年代には3D映画ブームが起こり、あのヒッチコックも、今から60年以上前に3D作品をつくっていたのです。

 さて、本書はタイトルにもある通り、巨匠・ジャン=リュック・ゴダールについて論じられたもの。ゴダール自身も、2014年に発表された『さらば、愛の言葉よ』で3D映画の製作に挑戦しています。

「実のところは、2Dだろうが3Dだろうが、観客が対峙し見つめているのは、徹頭徹尾、スクリーンに投影された光線の束でしかない。(中略)だからこそ、ゴダールは3Dで『さらば、愛の言葉よ』を撮ったのだ。彼はこの映画で、ここまで記してきた『デジタル3D性』を、ことごとく無視、或いは蹂躙している」

 ここに書かれた「デジタル3D性」とは、『アバター』『ゼロ・グラビティ』に見られるようなデジタル技術による美麗な3D映像により、観客が非現実性とリアリティをともに実感できることを指します。そしてゴダールは、従来のデジタル3D映画で行われてきた技法への反駁として、単に立体的に見せるだけではない、しかし3Dだからこそ実現できるある仕掛けをつくりました。それが何であるかは、作品と本書『ゴダール原論』で確かめてみてください。

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