たとえ最後まで読み通さなくても大丈夫な読書法とは?
- 『本をサクサク読む技術 - 長編小説から翻訳モノまで (中公新書ラクレ)』
- 齋藤 孝
- 中央公論新社
- 821円(税込)
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読むスピードが遅い、途中で飽きてしまったり眠くなってしまう、読んだつもりがすぐに内容を忘れてしまう......。読書の大切さはわかっているものの、こうした悩みから、ついつい本を敬遠しがちだという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
明治大学文学部教授の齋藤孝さんによる、本書『本をサクサク読む技術』は、読書にまつわる悩みの数々に焦点を当てた一冊。長編小説や難解な本を読破するためのコツや、本を選ぶ際のポイントをはじめ、そのタイトルが示すように、どんなジャンルの本であれ「サクサク読む技術」をわかりやすく教えてくれます。
そもそも何をもって本を「読んだ」とするか。このひとつの基準として齋藤さんは、本の内容を人に話せるか否かという点を挙げます。
相手に本の内容を紹介するためには、自分なりに本の内容を咀嚼し、自らの言葉にするという変換作業を行わなければならないため、記憶の定着にも繋がるのだといいます。つまり、内容を話すことさえできれば、たとえ最後まで読み通さなくても大丈夫。全体のうち2〜3割を読むだけでも、「より吸収度の高い、濃い読み方」ができているとのこと。
そして、この読み方を実践するには、適したタイミングと場所があるといいます。それは「本を買った直後に入る喫茶店」。その理由について齋藤さんは、次のように述べています。
「『読みたい』というモチベーションがもっとも高まるのは、その本を買った直後のはずです。そのチャンスを逃す手はありません。(中略)それはちょうど、穫った魚を新鮮なうちに捌くような感覚です。本は腐りはしませんが、買ったまま放置する、いわゆる『積ん読』は危険です。いつしか『読みたい』というモチベーションも消え、やがて書棚の奥に収まり、買ったことすら忘れてしまうかもしれません」(本書より)
喫茶店に入ったならば、1冊につき20分と時間を限定し、パラパラとページをめくりながら、大体どんなことが書いてあるのかを把握。おもしろそうな部分に目星をつけて読み、内容を人に説明できる状態にまですることが大事なのだそうです。
また読む際に重要なのは、線を引いたりキースレーズを囲んだりと、どんどん書き込んで本を徹底的に汚すこと。本をきれいに保存しようとせずに、自分の読んだ跡を刻んでいくことにより、吸収度は高まるのだそうです。
読書の秋。さまざまな本を楽しむためにも、まずは本書を「読む」ことからはじめてみてはいかがでしょうか。