イギリスと日本で違う「小保方さん問題」の報じられ方
- 『日本の女性がグローバル社会で戦う方法』
- 谷本真由美(@May_Roma)
- 大和書房
- 1,512円(税込)
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日本中の話題をさらった万能細胞の「STAP細胞」捏造疑惑。先日、行われた理化学研究所(理研)の小保方晴子ユニットリーダーの記者会見の生中継は、各局で高視聴率をマークするなど注目を集めました。会見での小保方さんの説明は不明瞭な部分も多く、専門家や視聴者からは不満の声も聞こえています。
一方、報道陣から「(理研の)笹井芳樹副センター長と不適切な関係にあったと報道されている。どう感じたか」といった、研究とは直接関係のない質問も飛び、それはそれで「本質的ではない質問」、「マスコミの報道姿勢もおかしい」と疑問を呈する人もいるようです。
そもそもSTAP細胞が発表された当初、祖母からもらった割烹着を着て実験を行う姿や、ピンク・黄色に塗り替えた研究室の壁、好きなキャラクターはムーミン......と、小保方さんの女性らしい一面が、研究内容以上にフォーカスされた側面があります。
たとえば朝日新聞は「泣き明かした夜も STAP細胞作製、理研の小保方さん」という見出しで快挙を報道。読売新聞は「論文一時は却下...かっぽう着の『リケジョ』快挙」といったスポーツ紙のような見出しで記事を掲載しています。
もちろんこれらの記事では研究内容にも触れてはいますが、業績に関係ない彼女の「女子力」がクローズアップされすぎています。スポーツ紙やワイドーショーならこれでも構わないかもしれませんが、新聞社や報道番組が同じ方向で報じるのはいかがなものでしょうか。
当時から、そういった日本の報道に疑問をぶつけているのが、書籍『日本の女性がグローバル社会で戦う方法』の著者・谷本真由美さんです。現在、ロンドンに住む谷本さんは、STAP細胞発見の初報をイギリスのニュース番組で知り、その後、日本での報道をネットで見ることになるのですが、その紹介のされ方の違いにびっくりしたそうです。
「BBCでは、テレビ放送でもウェブでも、まずこの発明が何であるか、なぜ画期的なのかが紹介され、イギリスの研究者の解説を盛り込み、医学などにどのように貢献するか、ということが明記されました。また小保方博士に関しては「Dr Haruko Obokata」と明記されているだけで、年齢や性別には触れていません(なお、イギリスでは博士号がある人のことはドクター何々と呼ぶのが当たり前です)。
イギリスの他の主要新聞でも、この発見が何なのか、どのように貢献するのかに記事のスペースが割かれ、小保方博士の年齢、性別、服装、ラボの装飾に関しては一切書かれていません。倫理問題に触れた記事があるのも日本と違うところです」(『日本の女性がグローバル社会で戦う方法』より)
件の会見でも、小保方さんの「泣くことを想定してマスカラを控えたメイク」や、清楚に見えるファッション、訴えかけるような声色など、見事なまでの「女子力」に注目が集まりました。もちろん、彼女が「そういう人」だという事実はあるでしょう。
ただ、それを差し引いても、日本のマスコミはその部分に流されすぎているのではないでしょうか。
とはいえ全てマスコミのせいにすることもできません。「マスコミは国民を移す鏡」とも言われ、読者が知りたい情報をマスコミは追いかけているのです。我々、視聴者、読者もそのことを改めて認識すべきかもしれません。