「面白い」とは何? 『ジョジョ』の作者が秘密を明かす
- 『荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 (集英社新書)』
- 荒木 飛呂彦
- 集英社
- 799円(税込)
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漫画好きの間で不動の人気を誇る『ジョジョの奇妙な冒険』(以下、『ジョジョ』)。1986年にスタートし、現在はシリーズ第8部『ジョジョリオン』が連載中。昨年10月から今年4月にかけてテレビアニメも放映されました。そんな『ジョジョ』の作者・荒木飛呂彦さんが、自著『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』の中で次のように述べています。
漫画家を志したばかりの頃、荒木さんは「面白い漫画とは何だろう?」と悩むようになったとのこと。さらに思考は進み、「そもそも『面白い』とは何だろう?」と考えるようになったそうです。
「そこで僕が研究材料に選んだのが、大好きだった映画です。自分が面白いと感じているものを分析して、ひとつひとつ説明できるようにすれば、「面白い」の正体が見えてくるはず。そして、優れた作家のテクニックを取り入れれば、その「面白い」を自分も漫画で追及できると思ったのです」
そうして映画作品を見ていく中で、荒木さんにとって「面白い」映画は、基本に"サスペンス"がある作品が多いことに気づいたそうです。荒木さんは"サスペンス"の重要性と奥深さにたどり着き、本書の中で「よいサスペンス、五つの条件」を提示しています。
1 謎があること
2 主人公に感情移入できること
3 設定描写の妙
4 ファンタジー性
5 泣ける
そして、「僕は映画を観るとき、この条件が揃うかどうかを常に意識していますし、自分が漫画を描くときも、これらを満たすように心がけています」とこの条件が、自身の漫画執筆を行ううえでの条件でもあることを明かしています。また、荒木さんが「面白い」と思った作品を例に挙げ、研究成果が惜しみなく披露されるほか、『ジョジョ』ファンにはたまらない、こんなエピソードも語られます。
「マカロニウェスタンに出ていたころのイーストウッドは、監督のセルジオ・レオーネから「演技したり、余計なことをしたりするな。立っているだけがいいんだ」と言われ、それがキャラクターになっていったそうです。その遠くを見て荒野に黙って立っているイメージは、はっきりと空条承太郎に投影されました。承太郎もあまりアクションをしないし、言葉少なにスタープラチナを繰り出すのみ。イーストウッドのように立っているだけで絵になることを目指したキャラクターなんです。またイーストウッドのように、はみだし者が孤独を抱えながら戦うのは、『ジョジョ』全体に通じる要素でもあります」
映画の楽しみ方が分かると同時に、荒木さんの創作技術を知ることが出来る貴重な一冊です。