今や大学・大学院もWEBの広報活動が欠かせない時代に
先日、アメリカ発のプレゼンテーションイベント「TED」の東京版が開催されました。これは最先端の学問や研究、文化活動などについて、専門家たちが一般向けに紹介するというもの。当日の模様はYouTubeで公開されており、世界中の人々が閲覧しています。
WEBを通じて世界がつながるようになった昨今、TEDのような試みは学問の領域において広まっています。特にアメリカは「学問×WEB」に意欲的に取り組んでおり、マイケル・サンデル教授(ハーバード大学)の『白熱教室』や、ウォルター・ルーウィン教授(マサチューセッツ工科大学=MIT)の『これが物理学だ!』などは大きな注目を集め、授業内容をまとめた書籍もベストセラーになりました。
こうした取り組みは、学問に興味がなかった人に目を向けてもらう機会を提供するほか、漠然と研究者になりたいと思っている学生を、それぞれの大学・大学院に呼び込む効果もあります。
実際、『これが物理学だ!』のルーウィン教授のもとには、彼の授業をYouTubeで見て、MITを志すことを決めたという若者からのメールが山のように届いているとか。つまり、WEB活動が今の大学・大学院にとって、とても効果的な広報手段になっていることを表しています。
そもそも研究領域が高度に先端化した今の大学・大学院では、「どこでどんなことが学べるか」なかなかわかりづらいという事情があります。そうした危機感は日本の大学も感じており、アメリカの大学ように入学者集めに工夫をこらす例も増えてきています。
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系では、その長い名前の通り、科学・科学哲学から、素粒子などの物理学、さらには生物学まで、非常に多岐にわたる専門領域をカバーする約50の研究室が、最先端の研究を行なっています。
ここは国内でも屈指の理系の教育機関なのですが、「相関基礎科学」という研究内容が複雑なため、入学を希望する大学生に向け、「この大学院ならどんなことができるのか」というメッセージを発するのに苦労してきました。
そこで今年からは、WEBと連携した「THE SCIENCE THINKER」というプロジェクトをスタート。特設サイトでは、"考える人"の周りにそれぞれの研究室と関連するキーワードを浮かべ、閲覧した学生が直感的に研究領域を把握できるようになっています。
5月14日には記者を招いたオープニングイベントも実施。2.4メートルの"考える人"のオブジェに、プロジェクションマッピングで相関基礎科学のキーワードやイメージヴィジュアルを投影しました。いわば、WEBサイトのリアル版です。
理系の基礎研究者を志望する学生が減少し、生徒獲得合戦が熾烈になってくるなかで発想された同プロジェクト。大学・大学院の枠を飛び越えてPRできるWEBを通じた広報活動は今後、日本でも活発になっていくでしょう。
【関連リンク】
THE SCIENCE THINKER
http://the-science-thinker.jp/