伊勢神宮の「式年遷宮」は、何故20年に1度おこなわれるのか

伊勢神宮めぐり歩き (一般書)
『伊勢神宮めぐり歩き (一般書)』
矢野憲一
ポプラ社
1,620円(税込)
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 最近、「伊勢神宮」という言葉を見聞きする機会が多くはないでしょうか。今年は20年に1度、伊勢神宮のご神体を新しい正殿に移す式年遷宮が行われるため、多方面で「伊勢神宮」が話題となっているのです。遷宮では、すべての社殿を建て替えて、神様に新しいお宮にうつってもらうので、大掛かりな行事となります。

 はじめて遷宮が行われたのは、なんと1300年前。様々な出来事がありましたが、今回で62回目となります。ではなぜ、「20年に1度」に行われるのでしょうか。これについては、詳しい資料が残っていないのが現状。しかし、信仰や技術を伝承するためという説があると、書籍『伊勢神宮めぐり歩き』のなかで紹介されています。

 20年もたてば木材は多少痛んできますが、大急ぎで建て替える必要はありません。まだまだ木材は使えるものばかりなので、伊勢にある他のお宮で使用するのです。そして、その機会に宮大工が次世代に技術を残す、またとない機会となっているのです。

 「宮大工は二十歳で入門し、四十歳で一人前、六十歳になれば棟梁で指導者です。神宝の製作者も同様でしょう。今でこそ人生八十年という時代ですが、日本人の平均寿命は戦前まで五十歳ほどでした。千三百年も前はもっとずっと低かったでしょうから、二十年というのは技術伝承を伝えることができる精一杯の年限だったのです」

 他にも説がありますが、技術伝承のためだったとしたら、とても粋な仕組みですね。建て替えだけが遷宮ではなく、神々の宝物や調度品も調進され、それらもその時代の最高の作り手によっておさめられます。

 神様の引越しだと思われがちな遷宮ですが、「文化の継承のためともいえる」と、同書ではまとめられています。

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