働く女性「4R」たちの皮肉な境遇とは
- 『女子のキャリア: 〈男社会〉のしくみ、教えます (ちくまプリマー新書)』
- 海老原 嗣生
- 筑摩書房
- 907円(税込)
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専業主婦が少なくなり、共働きというスタイルがスタンダードとなりつつある今の日本の社会。大手企業の新卒採用では、2~3割を女性が占めるようになりました。まだまだ同じ割合とは言えませんが、数十年前と比較すると大きな変化といえるでしょう。
では、実際にどのようなタイプの女性たちが活躍しているのでしょうか。
女性にとって働きやすい会社は依然少ないという現状を踏まえ、長く働くためにはどう立ち回り、どう見通す必要があるかについてまとめられた、海老原嗣生氏の書籍『女子のキャリア: 〈男社会〉のしくみ、教えます』では、総合職で働く女性には2つのタイプがあると紹介しています。
一つは、「体育会系女子」。男社会をものともせず、ガツガツ仕事をするタイプです。中途半端な男性社員よりも男らしく、テキパキと仕事をこなす女性社員の姿を想像してください。彼女たちは部下の面倒見もよく、重宝される存在となっています。
ただ、こういったケースは稀で、多くの場合は体育会系女子以外となります。内勤で、女性の多い部署に配属され、あまり危険な仕事はさせてもらえません。そして、体育会系女子以外の女性が、配属される部署にはある共通点があると言います。なぜかすべての部署に「R」の文字が入るのです。
・人事(HR)
・広告宣伝(PR)
・経理財務(IR)
・お客様相談室(CR)
これら四部署を総称して「4R配属」ともいいます。女性同士の教育が可能なため、経営のためにも都合が良く、繰り返し女性が4R部署に配属されています。しかし、問題もあります。こういった形でステップアップしていくと、30歳を過ぎて係長に近くなるころ、営業現場をまったく知らないキャリアのために、社内との意思疎通に困るといった問題が発生するというのです。
「同じ4R配属者でも、男性の場合は少なくない年数、営業や販売や製造などの他部署に異動して経験を積み、そのうえでまた、4Rに戻って昇進することが普通です。彼らは現場の仕事内容や苦しみなども理解しており、人間関係もできているため、お願いごとや調整なども進めやすい。そのキャリア差に、やはり女性社員が悩む場面に遭遇することになります」と海老原氏が分析。
さらには、女性社員を重要な職務においていると見せたいという考えが多くの会社に浸透しており、同期の男性と比べても昇格が早いといった傾向があります。一見、良さそうに見える昇格ではありますが、4R部署しか知らず、キャリアの偏りに悩んでいることも知らずに賞賛されます。また、社外には「スピード昇進」の象徴として宣伝されたりするので、ギャップに戸惑うことも。
こういった「4R」女性たちの皮肉な境遇に共感できる人は、決して少なくはありません。会社での女性の地位向上は前向きに進んではいますが、まだまだ問題は山積み。それが現状ではないでしょうか。