科学の目が現代人に安らぎを与える? 東野圭吾「ガリレオ」最新刊
- 『禁断の魔術 ガリレオ8』
- 東野 圭吾
- 文藝春秋
- 1,512円(税込)
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東野圭吾原作、探偵ガリレオシリーズの最高傑作との呼び声も高い『容疑者Xの献身』が、韓国で映画化。同映画の広告がポータルサイトに掲載されると同時に、特設サイトにアクセスが集中。ロードショー予定の映画検索語ランキング1位にもなるなど、10月18日の公開前から話題を集めていました。
もう、説明も不要かとは思いますが、同シリーズは天才物理学者の湯川学が数々の難事件を解決していくミステリー。日本では福山雅治主演でドラマ化、映画化され多大な人気を博しました。韓国版では、湯川と、パートナーである内海薫が1人のキャラクターとなり、韓流俳優のチョ・ジヌンが演じます。日本人からすれば、福山雅治でない湯川など、もはや想像できませんが、韓国版では、どのような味わいとなるのでしょうか。日本版との違いにも注目したいところです。
ガリレオシリーズの最新刊『禁断の魔術』が13日に発売されました。第8作目となる今作の中身は4編の短編集で、シリーズ初の完全書き下ろしとなっています。また、オリコン"本"ランキングBOOK(総合)部門では早々に首位となり、同一作家による小説作品の3作連続首位を記録しました。
冒頭の一編、『透視す』では、銀座のクラブで働くホステスが殺害されます。彼女は、客の名刺や、カバンの中身を透視する特技を持っていました。湯川でさえもひっかかってしまったその能力とホステスの死との関係はいかに。湯川の「トリックは単純なほど騙されやすい。科学の世界でも同じだ」という言葉が心に残る作品です。
科学の目から導き出されるガリレオのトリックは、いつも新鮮で、どの作品も驚きのラストを読者に提供してくれます。それだけではなく、この湯川の科学的、かつ客観的な視点が、複雑な人間関係の中を生きる現代人の中に、ある種の安らぎを与えてくれている。だから、人気シリーズであり続けるのだ、ということもできるかもしれません。