税務調査は正直者がバカを見る? 税務署に隠されたヤミの実態
- 『元国税調査官が暴く 税務署の裏側』
- 松嶋 洋
- 東洋経済新報社
- 1,620円(税込)
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今月から放送が始まったTVドラマ「トッカン 特別国税徴収官」など、多くの作品で、税務署員や税務署が題材にされています。フィクションの世界では、正義感に燃える主人公が不正を追求し、税金を徴収するイメージです。
日本の納税制度は、「申告納税制度」を基本としています。それは納税者が自ら計算し、申告して納税する制度。そのため、国税庁はホームページに「正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」という非常に高潔な理念を掲げています。税務署は正義感あふれる厳格な組織であることがわかります。
しかし、実態は大きく違うと、元国税調査官で税理士の松嶋洋氏は指摘します。松嶋氏は著書『元国税調査官が暴く 税務署の裏側』で、税務署にはびこる"4つの不公平"を暴露しています。法律を読めず、法人税も知らない署長や副署長。23年務めあげ、合格率9割以上の指定研修を受ければ申告書が書けずとも税理士になれるOB税理士制度。個人課税を知らない担当者が行う確定申告の無料相談......などなど、そのひどい実態は枚挙にいとまがないようです。
なかでも、税務調査は「税金をとってナンボ」とされているようで、その姿勢を松嶋氏は「正直者はバカを見る」と自身の体験をもって語っています。税務署では不正が想定される納税者に対し、税務調査を行います。この調査でもし不正が発覚すれば、加算税というペナルティを受けなければなりません。そして、税務調査をする前に、「申告内容のお尋ね」という文書が送られるケースがあります。
松嶋氏のクライアントにも「申告内容のお尋ね」が送られ、実際に間違いがあったので、税務署に修正して申告し直す旨を伝えたところ、
「間違いがあるのなら、今から税務調査します。このため加算税もかかりますので、必要な資料を用意して、税務署まで来てください」
と言われてしまったそうです。もちろん、税務調査はされていないので、加算税はとられるはずもないのですが、それを指摘すると「この電話で間違いを指摘している」「私がいいと言うまで、修正申告書を提出してはいけませんよ」と言われる始末。
脱税などの不正を取り締まるはずが、自らの組織に理不尽な不正がまかり通っている税務署。こうした実態を告発した本書には「税務署のあり方」をもう一度社会全体で見直してほしいという筆者の思いが込められています。