未解決のまま終えた前作の続きを描く、有栖川有栖氏の意欲作~『真夜中の探偵』

真夜中の探偵 (特別書き下ろし)
『真夜中の探偵 (特別書き下ろし)』
有栖川 有栖
講談社
1,728円(税込)
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 昨年6月に刊行された有栖川有栖氏の『闇の喇叭』。舞台は、探偵行為が禁じられた日本で、元私立探偵の父を持つ女子高生・空閑純(ソラ)が、親友の母にかけられた嫌疑を晴らすために事件に挑むといったもの。

 「これも小説の一つの終わり方」と、有栖川氏が語るように、解決しない大きな問題を残しながら物語は幕を閉じるという、インパクトのある作品でした。

 しかし、時間が経つにつれ、物語の続きが気になりはじめた有栖川氏。「わたしのことを書いて」とソラの声が聞こえてきたという有栖川氏は、ついに続編の着手を決意。新作『真夜中の探偵』では、『闇の喇叭』の事件から数か月経ったソラの姿を描いています。

 ──平世(へいせい)22年。すべての探偵行為が禁止された日本。ソラの両親は、ともに有名な探偵だが、母の朱鷺子は4年前から行方不明で、父の誠は昨年、警察類似行為で逮捕され、収監されている。ソラは伯父の住む大阪で一人暮らしをはじめる。母の行方の手がかりを探すなか、父母に仕事を仲介していた押井照雅という人物と会える機会が訪れる。数日後、押井の別邸で水に満たされた木箱に入った溺死体が発見された。被害者は元探偵で〈金魚〉と呼ばれていた男だった。容疑者リストに入ったソラは、自ら「水の棺」の謎を解くために調査をはじめる。

 両親の跡を継ぎ、探偵になることを固く心に誓ったソラの姿を描いた『真夜中の探偵』は、第56回日本推理作家協会賞、第8回本格ミステリ大賞を受賞した、ミステリーの名手・有栖川有栖氏の意欲作といえるでしょう。

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