あなたは「パンプキン爆弾」を知っていますか?

パンプキン!  模擬原爆の夏
『パンプキン! 模擬原爆の夏』
令丈 ヒロ子,宮尾 和孝
講談社
1,296円(税込)
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 第二次世界大戦中にアメリカ軍が使用した爆弾に「パンプキン爆弾」というものがあります。これは、1945年8月9日に長崎に投下された原爆「ファットマン」の模擬爆弾のことです。原爆投下に備えた爆撃機の訓練のために使われました。

 爆撃機から投下され爆発するまでの弾道や事前データ採取のために、ファットマンとそっくりの丸い形状で、オレンジ色に着色されていたことから「パンプキン爆弾」と呼ばれました。模擬爆弾といっても、重さは約4.5トンあり、核物質は積んでいないため核爆発は起きないものの、十分な殺傷能力がありました。

 1945年7月20日から8月14日にかけて、新潟、福島、富山、東京、福井、大阪、山口など全国30都市に49発が投下され、全体で死者400名・負傷者1200名を超す被害を出しました。

 日本が降伏すると、アメリカ軍は未使用のパンプキン爆弾を海中に遺棄したため、長い間この事実が一般に広く知られることはありませんでしたが、1991年に愛知県の「春日井の戦争を記録する会」がアメリカ軍の文書を調べ、模擬原爆のくわしい内容が判明しました。

 大阪市東住吉区田辺では、投下跡地に碑が建てられ、この事実を後世に伝える取り組みが行われています。

 小学生向けの本書『パンプキン! 模擬原爆の夏』は、その田辺に住む小学5年生の女の子(ヒロカ)のおじいちゃんの家に、東京からいとこの男の子(たくみ)が自由研究のために遊びに来たところから話が始まります。

 「パンプキン爆弾」についての自由研究を進めながら、ヒロカとたくみが子どもなりに原爆や戦争というものについて、考えを深めていく様子が見事に描かれています。

 本当にあったことを小説で読む・知る──親子で読む児童文学の秀作です。

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