これからの時代を生き抜くためには、日本人が苦手な「論理的な選択」が必要?

選択の時代 (廣済堂新書)
『選択の時代 (廣済堂新書)』
鈴木 光司
廣済堂出版
864円(税込)
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 東日本大震災によって、大きなターニングポイントを迎えている日本。『リング』『らせん』などの代表作がある小説家・鈴木光司氏は、「原子力を含めた今後のエネルギー政策、電力によって成り立つ日々の暮らし、税金、そして、これからどういうリーダーを選ぶのか......この数年になされる『選択』は、この先、日本の未来を大きく左右することは間違いない」と言います。

 自著『選択の時代』のなかで、日本は情緒的な社会で、日本人は論理的な思考トレーニングをうける機会に恵まれていないと指摘する鈴木氏。そんな私たちがよりよい未来のための「選択」を論理的に実行できるのか、危惧しています。

 なぜ、日本人は情緒的な民族になってしまったのか――。鈴木氏は、勝間和代さんとの対談の中で「戦争や争いごとが嫌いな人たちが大陸からこの国に逃げ込んで来たんじゃないか」という仮説を立て、Y遺伝子に注目します。Y遺伝子とは、Y染色体に含まれる遺伝子のことで、正常なオス個体には存在し、メス個体には存在しません。

鈴木 チンギス・ハーンに代表されるけど、何千年も前から、中国は戦乱の歴史だったでしょう。そうした中、Y遺伝子がどのようにして大陸を移動し、最終的には海を渡って日本にたどりついたのか。男の象徴であるY遺伝子もいっしょに大陸から逃げて来たことはまちがいない。そうなると、どうなるか。

勝間 真面目で誠実で、リスクを取りたくないタイプの人たちが民族的にこの日本に集まったんですね。

鈴木 そう、戦争は嫌いだという平和主義者。しかも、非常にまじめでおとなしい人たち。勤勉で正直者。つねに人と協調していこうとする心優しい人々。やがで、そういう人たちのY遺伝子が次の世代、そのまた次の世代へと伝わった。その時に彼らの末裔が手にした言語が、情緒的表現の多い日本語だと解釈すれば、日本人はなぜ論理的ではないのか、という答えには一応あてはまるんじゃないかと。

 鈴木氏は、日本人が情緒的だからといって、日本に絶望しているわけではありません。自分たちが論理的な民族ではないという「悩み」をきちんと自覚できれば、それは「強み」に転換できると言います。そのためには、せめて「右に倣え」という考えをやめるべきと。 

 第二次世界大戦で日本が「アメリカと戦ったら、絶対勝てない」とわかっていたのに、戦争に突入したのはなぜか?

 振り込め詐欺が流行ったら、ATMの引き落とし限度額を一律下げてしまうのはなぜか?

 子どもたちのクラスで、いじめがなくならないのはなぜか?

 日本の過去の歴史、そして現代社会のできごとの一つひとつを例に挙げながら、日本人は情緒的で、論理的な選択ができないことを明解に示していきます。

 さまざまな選択を迫られている現在の日本。「論理的に考えて選択する」という重要性を、誰もが心に刻まなければ、私たちは生き抜いていけないのかもしれません。

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