ラジオに耳を傾けたくなる映画
ラジオの制作の裏側。『ラヂオの時間』
監督である三谷幸喜さんが、自らが手がけたドラマの脚本が勝手に書き直され、放送されてしまった経験を元に生み出された本作。鈴木みやこ(鈴木京香)は執筆した脚本が初めてラジオでドラマ化されることになった普通の主婦。脚本は熱海を舞台とした平凡な主婦と漁師の恋物語だったはずが、主演女優のわがままをきっかけに舞台はアメリカ、主役の二人は女弁護士とパイロットへと、みやこの作ったストーリーとはかけ離れたものに。ドラマは生放送だったこともあり、アクの強い役者や気の弱いプロデューサーによって変更を加えられたストーリーは、辻褄が合わない展開に陥るも、後戻りは不可。登場人物達と共に、観る方の予想を裏切る結末へと物語は向かいます。コミカルでありながら緊張感もはらんだ、ラジオの制作現場の死闘を垣間みるにはうってつけの作品です。
- ラヂオの時間 スタンダード・エディション [DVD] 東宝
自由で居心地がいい。それがラジオ!『パイレーツ・ロック』
ラジオの魅力といえば、音楽との偶然の出会いを提供してくれるDJの粋な選曲がその一つ。本作のモデルはポピュラーミュージックの放送が政府によって制限されていた、1960年代のイギリスに実在した「海賊ラジオ局」。当時は、この電波塔を載せた「海賊船」が海の上から禁止されたロック音楽をかけまくり、当時の若者から熱狂的な人気を集めていました。そんな船に居着くことになったカール少年と生粋のロック魂を持ったDJたちの交流を描いた本作。色々なメディアが溢れる今の時代の中で、ラジオがいかに自由であり居心地の良い場所であるかが体感できるはずです。
- パイレーツ・ロック [DVD] ジェネオン・ユニバーサル
このラジオ愛がヤバイ!『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
ラジオ番組って「お祭り」のようなものだと思います。作り手側であるパーソナリティとともに、リスナーのみんな(いわゆるハガキ職人)も一緒になって番組を盛り上げる。故ロバート・アルトマン監督の遺作でもある本作は、最終回を迎えたラジオ番組の公開収録での悲喜こもごもを描いたコメディ映画。色んな人の声が入り混じって、ラジオ特有の温かさは作られると教えてくれる「ラジオ愛」に溢れた作品です。ちなみに、本作で描かれるラジオ番組『プレーン・ホーム・コンパニオン』は、アメリカで現在も放送中の実在する番組であり、司会のギャリソン・キーラーは本作でも同じく司会役で出演しています。
(文/伊藤匠)
- 今宵、フィッツジェラルド劇場で [DVD] 東宝