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プロレス×映画

プロレスラー出演映画シリーズ:どこが無双やねんとツッコまざるを得ない『ネバー・サレンダー 肉弾無双』

ネバー・サレンダー 肉弾無双 [DVD]
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 今月のプロレスラー出演映画シリーズは、WWEのザ・ミズ主演『ネバー・サレンダー 肉弾無双』(2013)。
 ザ・ミズことマイク・ミザニンは、DQN系タッグチームでの台頭後、「I'm Awesome!(俺って超スゲェ)」という決め台詞と共に若手トップヒールに君臨。2010年には最高峰となるWWE王座まで獲得した、30代前半若手WWEスターの中では成功者の部類に入る人物です。

 本作は「WWE studios」製作のWWE所属スターが主役を張るシリーズで、海兵隊員による身内の救出劇が共通コンセプト。ジョン・シナの1作目、テッド・デビアス(Jr.)の2作目に続く3作目ですが、前作同様ビデオスルー作品。話の繋がりは一切無く、また今回の救出対象は嫁ではなく、妹とその彼氏。

 現役海兵隊員ジェイク(ミズ)は休暇を使って姉と妹が住む故郷に帰省するも、堅物な性格から、定職に就かずDQNな生活をする妹と口論になり、姉とも意見が合わずに除け者状態。
 ところが、廃品置き場で彼氏とイチャついていた妹が、過激派グループによる武器密売人射殺現場を目撃してしまったせいで囚われの身に。
 さらに過激派グループを追っていたFBIから爆弾テロ計画の危機を明かされ、妹(と彼氏)の救出に加え、成り行きでテロ阻止もこなすハメになるというストーリー。

 WWEメイン視聴者層である10~30代男性向けと思われるゲーム的演出(Call of Duty的?)などが見られるものの、四の五の言わずにやたらと火薬を使っていた前2作に比べて予算が少ないのか、過激派とFBIの駆け引きなどサスペンス面を強調したストーリー展開が特徴の本作。

 とはいえ、過激派リーダーのテロ主導目的が、株で失敗して自殺した父と保険会社が保険金を出し渋ったせいで病死した母の復讐のため、社会的弱者からあぶく銭を巻き上げる裕福層に痛みを思い知らせてやるぅぅぅ、という逆恨み全開の理由のため、爆弾テロに飛躍する動機にしては正直な微妙なところ。

 そして「肉弾無双」なる副題のくせに8割方、銃殺。しかも肉弾戦にしても無双というほど圧倒的ではないのです。無双を謳うならセガール大先生張りに完封しなさいよ!
 いやまあそこは邦題だから仕方ないのだけれども、WWE製作のくせに肉弾戦でプロレス技無しとはどういうことなの!(作品性を考えると無しの方が良いんですが)

 また、ヒロインといえる妹リリーの額のシワ&ほうれい線により「い、妹?」感が拭えないのも難点。妹役のアシュリー・ベルって歳いくつだよと思って気になって調べてみると、1986年生まれの27歳、だと・・・。

 さておいて、最後に起爆状態にされた爆弾を乗せたパトカーを安全な場所まで運転して、クラッシュしながらも爆発寸前に命からがらする脱出する主人公ジェイク。都市部での大爆発を防いで家族と親友と大団円・・・なのですが、妹は彼氏と、姉は親友の警察署長とイチャつき、それをにこやかに見守る主人公、というハッピーなんだけれど、言い知れぬ除け者感がボッチの心を抉るエンディングになっております。

 尚、ミズ当人は現役WWEスターとして活躍中ですが、トップ戦線から一歩二歩下がった位置なのが実情。元々、MTVのリアリティ・ショーの人気出演者からレスラーに転向した変わり種ということもあり、「ミズTV」なる番組内コーナーを持っていますが、ソーシャルメディアへの影響力などもあり、WWEのスポークスマンとして期待を受けているようです。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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