インタビュー
映画が好きです。

Vol.25 トム・フーパーさん(映画監督)

型にはめられた人たちが生まれ変わろうとする話が僕は好きなんだ

 『英国王のスピーチ』でアカデミー賞4部門受賞し、ミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』を映画化し大ヒットへと導いた巨匠、トム・フーパー監督。彼が『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、注目を浴びまくっている俳優、エディ・レッドメインと2度目のタッグを組んで完成させたのが『リリーのすべて』。いよいよ公開が迫る中、先日来日したトム・フーパー監督にインタビュー! 今から80年以上も前に世界初の性別適合手術を受けたデンマーク人リリー・エルベの実話に基づく感動のストーリーに監督はどんな思いで挑んだのか!? もちろんエディ様の魅力も伺ってきました。


──エディ・レッドメインさんとは『レ・ミゼラブル』に続きタッグを組まれていますが、監督の思うエディの魅力をお聞かせください!

「エディと初めて仕事したのは彼が22歳のとき、TVドラマで彼を起用したことがキッカケだったよ。ヘレン・ミレン、ジェレミー・アイアンズが出演している『エリザベス女王 ~愛と陰謀の王宮~』(05)では、エリザベス女王に謀反しようとして死刑宣告を受けるシーンがあったんだけど、そのときのエディの素晴らしい演技が忘れられなかったんだ。本当に死刑を言い渡された感じだったよ(笑)。苦悩に満ちて震えていて、役になりきっていたのを見てすごい才能だと思った。

 エディには感情的に伝える力があったから『レ・ミゼラブル』でマリウス役に起用したんだ。僕は彼が劇中で歌うシーンが大好きだよ。マリウスの同志を亡くした彼の悲しみがリリーに繋がって、リリーの旅路とは通らざるを得ない厳しい道なんだとエディなら伝えてくれると思ったんだ」

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エディ・レッドメインが美しすぎる女装姿を披露。

──本作では、エディのキレイなリリー姿が日本でも話題になっていますが、役作りで監督がエディに与えた最大のアドバイスは何ですか?

「リリーは自分のことを女性だと信じている、そこに光を当ててくれ。他のことは気にしなくていい、とアドバイスしたよ」


──リリー・エルベが、自分らしくあるために命がけで未知の手術を受けるシーンには、とても感動させられました。監督が思う、一人の人間が勇気のある決断をすることを描いた物語の魅力とは何だと思いますか?

「リリーの勇敢さはとても素晴らしく思うよ。当時は手術やそういったもののコミュニティがなかったしね。医療も抗生物質がなく、放射線を浴びたり、監禁したりするような時代だったし、前例のない外科手術だった。リリーの生きた時代は、そういうリスクを負わざるを得ない時代だったのかもしれない。大きな変化に挑む人たち、障害があっても本当の自分自身を求める人たちに、惹かれるんだと思う。過去の作品では『英国王のスピーチ』のジョージ6世、『レ・ミゼラブル』ではジャン・バルジャン、型にはめられた人たちが生まれ変わろうとする話が僕は好きなんだ」

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このスクリーンショットを見ただけで、すでに、泣ける。

──監督の好きな映画は?

「僕はスタンリー・キューブリックのスタイルに影響を受けている。スタンリーとは『アイズ・ワイド・シャット』の撮影で一緒に仕事をしたんだけど、スタンリーの18ミリカメラで、ワイドな画を作るところが好きなんだ。誰かのクローズアップでも周りがボケないし、周囲とキャラクターの関連性を保っていて、ちゃんと方向性が求められてるし、キャラクターに影響が表れているんだよ。

あと、僕の母はオーストラリア人だから、オーストラリアの映画監督に興味があって、ピーター・ウェイナーが大好きだよ。『トゥルーマン・ショー』は素晴らしかったね! ヴィジュアルは革新的だし、コメディの中に悲劇の雰囲気もある。商業映画としても成功しているしね」


──監督の憧れの監督は?

「僕は、昔の古典的な人に興味があるんだ。デヴィッド・リーンとかね。僕が12歳くらいのとき、映画監督になりたくて、古典の名作や巨匠の作品を見て独学で勉強したんだ。それが自分のスタイルの基礎になっていると思う。アンドレイ・タルコフスキー、フランソワ・トリフォー、マーティン・スコセッシ、イングマール・ベルイマンとか、彼らが基礎になっているんだ。日本の監督だと黒澤明かな。黒澤明は巨匠だよ!」

トム・フーパー監督、ありがとうございました!

(取材・文/トキエス)

***

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『リリーのすべて』
2016年3月18日(金)より公開

監督:トム・フーパー
出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、アンバー・ハード、マティアス・スーナールツ ほか
配給:http://東宝東和/lili-movie.jp

原題:『The Danish Girl』
2015/イギリス/120分

公式サイト:http://lili-movie.jp
(c)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

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トム・フーパー

代表作は、アカデミー賞最多12部門でノミネート、作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞の主要4部門を受賞した『英国王のスピーチ』(2010年)、作品賞を含むアカデミー賞8部門でノミネート、助演女優賞他3部門を受賞した『レ・ミゼラブル』(12)。その他の監督作に、『くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!-』(09・未)、『ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト』(04・未)がある。

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