面倒なことは先延ばし......これってダメ人間? 脳科学&心理学の観点から「行動スイッチ」を入れるコツを解説
- 『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ (科学的に先延ばしをなくす技術)』
- 大平 信孝
- かんき出版
- 1,540円(税込)
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手を付けなければいけないことを後回しにしてしまう、ギリギリになるまでやる気が出ない、歯医者や眼科など少しでも億劫に感じることは先延ばし、夏休みの宿題は最終日に慌てて終わらせる......。これらの状況に共感できる「つい先延ばししてしまう人」は、ダメ人間でしょうか? いいえ、違います。現状を維持しようとする脳の働きのせいです!
そんな心強い言葉をくれるのは、書籍『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ (科学的に先延ばしをなくす技術)』の著者であり、メンタルコーチでもある大平信孝さん。大平さん自身も、先延ばしばかりの人生で自己嫌悪に陥った経験があり、脳科学や心理学を学んだことで、先延ばしは「自分の意志の弱さやだらしない性格のせいではない」と気づき、「行動のスイッチの入れ方」を知ったのだといいます。
では、その「行動のスイッチ」はどうすればオンになるのでしょうか。冒頭でも少し触れましたが、そもそも私たちの脳は現状を維持しようとする防衛本能が備わっています。そのため、いきなり生活を一変させるような行動は、脳の仕組み上難しいわけです。
しかし、脳には「側坐核」と呼ばれ、刺激されると行動力の源になる「ドーパミン」を分泌してくれる場所があります。ここを刺激すれば、「行動のスイッチ」をオンにできるのです。しかも、その刺激はたった10秒の小さなアクションでOKだと大平さんは言います。
「たとえば、ランニングを始めたいのに、なかなか動けないのであれば、『最初の10秒はどんなことをするのか?』を考え、それだけを実行してみます。たとえば『シューズを履く』『ランニングウェアに着替える』といったことをとりあえずやってみるのです」(同書より)
「たったこれだけの行動で何が変わるの?」と思う人もいるかもしれません。しかしここで重要なのは、「10秒アクションで失敗する人はいない」ということ! 先延ばしをして何もしない日々に、行動するための種をまけたことこそが大きな一歩になります。また、たった10秒の行動でも側坐核に刺激を与えられるので、ドーパミンが分泌されて、10秒アクションをきっかけに15分、30分続いたというのは「よくあることだ」と大平さんは言います。
「とりあえず10秒だけ動いてみる」というハードルの低さなら、今までより行動できそうな気もしますが、それでも動けない人もいるかもしれません。どうしても動けないときは、「最悪の状況を具体化する」ことを大平さんは勧めます。
「極端に言うと、人が行動する理由は、2つしかありません。それは、『苦痛回避』と『快追求』です」(同書より)
「苦痛回避とは、イヤなことを避けるための行動です。『辛い、苦しい、痛い、恥ずかしい』といったことを避けるために行動します。(中略)一方、快追求は『ほしい』という欲求です。ほしい結果を得る、夢や目標を実現する、あるいは『楽しい、うれしい、気分がいい』という感情を得るために行動します」(同書より)
状況によっては快追求よりも強烈な苦痛回避のスイッチを入れるほうが効果的な場合があるそうです。たとえば仕事のトラブル報告は、上司に報告したほうがすっきりするし、早い対応が評価されるかもしれません。でも言いづらいし億劫ですよね。「報告すればすっきりする」という快追求では、行動スイッチとしては少し弱い気がします。そんなときは、報告が遅れたことで起こり得る"最悪の未来"を紙に書き出してみるといいのだそうです。
「未来に待ち受ける苦痛の悲惨さ、ひどさが具体的になればなるほど、『こうはなりたくない』『それだけは避けたい』と苦痛回避の行動スイッチが入ります」(同書より)
ただし、苦痛回避のスイッチは「使いすぎ注意」だと大平さん。どうしても動けないときの切り札にしておきましょう。
ここで紹介したコツは「10秒アクション」と「最悪の状況を具体化する」のたった2つ。同書ではさらに35のコツが登場するため、自分にあった行動スイッチを入れる方法が見つかるはずです。「先延ばしをやめたい」「行動できる人になりたい」と思ったことがある人は、同書を読んでみてはいかがでしょうか。
[文・春夏冬つかさ]