最も怖いのは目立つこと!? 令和の若者心理をモチベーション研究家が解き明かす
- 『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』
- 金間 大介
- 東洋経済新報社
- 1,650円(税込)
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「今どきの若い者は......」というのは、いつの時代にも聞かれるお決まりの言葉。これまでも時代とともにさまざまな若者像がフィーチャーされてきました。では令和の若者たちにはどのような姿が見られるのでしょうか。
彼らは「まじめで素直ないい子」とされるいっぽうで、「打たれ弱く、繊細で、何を考えているかわからない」といった声もよく聞かれます。そんな複雑で微妙な心理を、「いい子症候群」というフレーズに乗せて解き明かした書籍が『先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち』です。
著者はイノベーションとモチベーションの研究家である金間大介さん。金沢大学や東京大学で教鞭をとっているだけあり、 同書には学生たちとのエピソードも満載です。
たとえば大学の広い講義室で授業を受ける際、みなさんならどのあたりに座ろうと思いますか?
少し前まで普通だったのは、隣を1つ開けて座るというもの。そのため、この場合は「後ろはだいたい埋まっていて、前の座席も両端は誰かが座っており、前方真ん中に空きが多い」(同書より)という配置になります。
けれど、現在の大学生はそのような座り方はしません。ポイントは「学生同士の距離」。友だち同士という認識があれば隣を詰めて着席していくため、前方はガラ空きのまま後方に密集して座り、その1列がまるごと埋まるというのも珍しくありません。
こうした行動原理はまさに著者が挙げる、以下の3つの"いい子症候群"の特徴に当てはまるものだといえます。
「学校や職場などでは横並びが基本」
「授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す」
「タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする」(同書より)
他にも同書では、彼らの特徴として以下の5つを挙げています。
「言われたことはやるけれど、それ以上のことはやらない」
「人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない」
「一番嫌いな役割はリーダー」
「自己肯定感が低い」
「競争が嫌い」(同書より)
こうしたいい子症候群が増えている背景にあるのが、「同調圧力」の存在です。現代の学校教育における協調強化路線の中で、「みんなで」「チームで」「一体感を持って」といった集団的感情は、「自らをいましめよ」「目立つ行為を控えよ」という同調圧力に転移されると著者は分析します。この心理が芽生える時期はかなり早く、小学校低学年から高学年に上がる時期にいい子症候群は急増していくのだそうです。
もし、いい子症候群の自分を少しでも変えたいと思っている人がいるなら、その具体的な方法として著者は、「質問力を鍛える」「メモの取り方を変える」という2点を勧めます。著者は、「ぜひ成長を意識的に感じてほしい。他者比較ではなく、自分比較で。そして成長を楽しんで」(同書より)とエールを贈ります。
令和の若者たちの実像が徹底分析された同書は、"今どきの若者"を理解したい世代はもちろん、現役で「いい子症候群」の若者たちにとっても大きな気づきや学びのある一冊でしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]