古い労働観から抜け出せないミドル世代、必読! 真の働き方改革のヒントとは?
- 『働かない技術 (日経プレミアシリーズ)』
- 新井 健一
- 日本経済新聞出版
- 935円(税込)
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現在、我が国の重要政策の一つとして国を挙げての取組みがなされている「働き方改革」。月の時間外労働に上限が設けられるなど、今後はより生産性の高い働き方にシフトチェンジしていくことは明白です。
そんな中、経営コンサルタントであり本書の著者でもある新井健一氏が、これからの時代に必要だと提唱するのが「働かない技術」。これは業務削減・効率化のための考え方であり、「企業人」として生き抜いていくための心構えでもあるといいます。
この「働かない技術」が特に必要とされるのは、働き方改革のキーマンとなる30代後半~40代のミドル世代だそう。たとえば、おつきあい残業をなくせなかったり、長いだけの会議をダラダラと続けたり、目的よりも「長時間がんばること」に重きを置いていたり。こうしたムダな仕事をしているガラパゴス人材は、今後生き残っていくことは難しいと著者は言います。古い労働観を切り替えて、働き方改革の本質を見極めることが重要になってくるというわけです。
では、これまで染みついた労働観から脱却するためにはどうすればよいのでしょうか? たとえば、その改善努力の一つとして紹介されているのが「職場のムリ、ムダはどこにある? 業務効率改善機会」という図。この図では「多すぎる承認・決議」「多すぎる電話対応」「不明確な責任と権限の流れ」といった職場のムリ、ムダが挙げられているのですが、こうした問題には業務改善のフレームワーク「ECRS」に当てはめて考えてみることが薦められます。「ECRS」とは「Eliminate(排除):既存業務の何かを取り除くことはできないか?」「Combine(結合と分離):類似の業務を一つにまとめるか、異なる業務を分けられないか?」などといった手法のことだそう。
ほかにも財務の視点で職場を変えるための「バランス・スコア・カード」というツールや部下の管理・育成のために必要なスキルなど、具体的な方策も提案されています。
また、信条的な部分では、これからの時代に必要な労働観として、著者は「徳」を挙げています。「『徳』とは、今後ますます多様なメンバーが集う職場において、安易にマジョリティーに迎合することなく、かといって自分の考え方に固執することなく、全体にとっての『公正さ』を考えられたり、あの人にだったらついて行きたいと思わせる品性を養うこと」とのこと。効率性や生産性を重視する欧米的な考えとともに、日本人ならではの「徳」という価値観を持つことも大切であると考えさせられます。
これまでのキャリアの再点検をする意味でも、働き盛りのミドル世代は読んでみて損はないであろう本書。これからの時代に必須となる「働かない技術」をどう身に付ければよいか、そのヒントを皆さんも見つけてみてください。