伝説のプロ投資家が教える「お金に振り回されない生き方」とは?

いま君に伝えたいお金の話
『いま君に伝えたいお金の話』
村上 世彰
幻冬舎
1,300円(税込)
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 投資家・村上世彰(むらかみ・よしあき)氏。ニッポン放送株取得に端を発した、2005年のフジテレビ買収騒動では、ライブドアの堀江貴文氏とともに渦中の人となり、「ヒルズ族」「TOB(株式公開買い付け)」「モノ言う株主」と言った言葉がメディアを賑わせましたが、村上氏の記者会見での発言の数々、言動をご記憶の方も多いでしょう。

 旧・通商産業省(現・経済産業省)の官僚を経て独立し、当時運営していた「投資会社M&Aコンサルティング」いわゆる"村上ファンド"は、運用資産額はおよそ5000億円にも上ったと言われています。

 2006年、ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引容疑で逮捕、有罪判決。以降はシンガポールに移住し、メディア露出を控えていた村上氏ですが、その約10年間の出来事―-ボランティア活動に取り組み東日本大震災の際に炊き出しに行ったこと、社会貢献をミッションに村上財団を設立したこと―-などは、昨年2017年出版の自著『生涯投資家』(文藝春秋刊)に詳しく描かれています。

 『生涯投資家』に寄せられた反響から、日本各地の中学生・高校生を対象に「お金の授業」と称した講演会を実施し、その反応を踏まえて、日本の子どもたちへのメッセージをまとめたのが、新著『いま君に伝えたいお金の話』。

 村上氏によれば、日本の教育現場ではいまだに「子どもはお金のことなんて考えなくていい」「お金=悪いもの」(同書より)といった考えが主流なため、金融教育を受ける機会がないまま社会に巣立ってしまう若者がほとんどであり、早い段階でお金に向き合うことが大事だと訴えています。

 同書では、タンス預金が多い家計や、多額の内部留保を抱える日本の企業など、必要以上にお金を貯め込む日本社会を人間の身体にたとえ、貯め込んでしまうと血液の流れが止まり、健康でなくなってしまう、血液=お金を循環させることが、日本の経済循環を促すと力説。

 また、同書の中では、近年社会問題化している奨学金問題にも言及。

 「せっかく将来のために教育ローンを利用して勉強したのに、そのローン返済のために自分の将来を、場合によっては自分の親の生活まで破壊してしまうということがある。そういう現実も知っておいてください」(同書より)

 と、貸与型の奨学金が借金であることを説明し、奨学金を返せずに過去5年間で1万5000人も自己破産していることに触れ、進学目的とはいえ安易な借金には警鐘を鳴らしています。

 「僕はお金によって、幸せを得た人もたくさん知っていますが、人生が狂ってしまった人、お金持ちだったのに使い方を間違えて自分も周りも傷だらけになってしまった人、立ち直れないほどのダメージを受けてしまった人も、たくさん知っています」(同書より)

 「人から借りたお金は簡単に『凶器』となりえるということ。これは、忘れないでください」(同書より)

 など、お金を使うリスクについても論及。"お金のプロ"を自認する村上氏が、"貯金魔"だった幼少時代のエピソードをはじめ、読みやすい言葉で綴った同書は、子どもだけでなく、現役ビジネスパーソンにも読みごたえ充分な内容となっています。

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