第95回 春の映画館は蝙蝠祭り!?
映画『モービウス』より
いま映画館をにぎわせているのが蝙蝠(こうもり)です。
まずは『ザ・バットマン』。その名の通り、もちろん蝙蝠をモチーフにしたヒーローです。彼がなぜ蝙蝠のかっこうをするのか? コミックでは犯罪と戦うと決めたブルース・ウェインが普通の格好で戦っては犯罪者たちは驚かない、と思案を巡らしているとそこに一匹の蝙蝠がまよいこむ。「これだ!」と思ったブルースはバットマンになる、という設定でした。
調べてみるとバットマンの生みの親の一人、ボブ・ケインは1926年に公開された『ザ・バット』という犯罪スリラーに出てくる、蝙蝠姿の悪人に感銘を受けてキャラ・デザインをしたそうです。悪のキャラをヒーローにすることで悪人たちが恐れと敬意をいだく存在になるだろうと。
なおもう一人バットマンに影響を与えたのが怪傑ゾロと言われています。なので映画『ザ・バットマン』の中にも、バットマンのことをゾロに例えるセリフが出てきます。『ジョーカー』にもゾロを意識したシーンがあります。
狼男は狼にかまれ、スパイダーマンは蜘蛛に噛まれて変異しますが、バットマンの場合、蝙蝠に噛まれて蝙蝠男になったというわけではありませんが、ほぼ同時期、蝙蝠の力を得た超人の映画が公開されました。『モービウス』です。ジャレッド・レト演じる天才科学者が自らの血の難病を治療するため吸血蝙蝠の血清を打ち怪人となってしまいます。特殊な血清で超人になるというところはキャプテン・アメリカに似ていますが、モービウスはモンスター寄り。もともとスパイダーマンのコミックでデビューしました。(日本では78年に刊行された翻訳版スパイダーマン光文社版の5巻に収録されています)
このエピソードではスパイダーマンことピーター・パーカーが普通の人間に戻りたいと思います。そしてある血清を飲む。ところがその効果が裏目に出てなんとわき腹から左右2本づつ計4本の腕がはえてしまう。(そう6本腕になってしまう)。慌てたピーターは親交のあるコナーズ教授を訪ねます。しかしコナーズはショックを受けるとトカゲ人間リザードに変身してしまう体質。ピーターとコナーズは研究を始めますが、そこに偶然にもモービウスが絡んでくる。結果6本腕の蜘蛛男VSトカゲ人間VS蝙蝠怪人というかなりグロいバトル。もはやショッカーの怪人せいぞろいですね(笑)3人とも科学の力で自然界の生き物の特性を持ってしまった超人という点が共通です。だからスパイダーマンは自分も一つ間違えればモービウスのようになっていたかも知れないと思い、彼に同情するのです。
映画はスパイダーマンとの絡みをカットしモービウスを主人公とした、ソロ映画になっています。面白いのはジャレッド・レトは『スーサイド・スクワッド』等でバットマンと敵対するジョーカーを演じています。蝙蝠男の敵を演じた彼が今度は蝙蝠男というわけですね。というわけでバットマンとモービウスという2大蝙蝠系キャラがいま映画館にいるわけですが、もう1本蝙蝠ネタを。
クロエ・グレース・モレッツ出演の『シャドウ・イン・クラウド』。第二次世界大戦を舞台にしたモンスター映画ですが、予告編等からもわかる通り、モンスターが蝙蝠っぽいのです。というわけでこれもまた蝙蝠映画のバリエーションでしょうか?(笑)
(文/杉山すぴ豊)
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『モービウス』 全国公開中!
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