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プロレスラー俳優法則探訪:「意義ある本職役ならWin-Winな法則」ハルク・ホーガン『ロッキー3』

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【プロレスラー俳優法則探訪 FILE.3】

 スポーツ選手を映画に起用するというのは、その特定ジャンルのファンへの訴求力、売上を期待しての起用ということになるでしょう。
 前回も少し触れましたが、人気選手者であるほど大人の事情でカメオ的な起用になる傾向があり、しばしば「本人役」で登場することになります。

 下手な役をつけられて無残な姿を映像に残される方がファンにとってはダメージが深くなるので、「本人」役の方がマシだったりしますが......

 幸か不幸か、製作側に創造性と予算がある場合はちゃんとした役が用意され、「本職役」で起用されることもある。
 そして、この起用方法の代表例といえば、かの『ロッキー3』(1982)でプロレスラー役を勤めたハルク・ホーガン!

 いわずと知れた『ロッキー3』は、王者になったロッキーがセレブ生活に溺れ、かつての自分のようなハングリーな挑戦者クラバー・ラング(ミスター・T兄貴!)に惨敗し、王座陥落。親友アポロと嫁エイドリアンの助けでリターンマッチに向けて復活するお話。

 ホーガン先生は、序盤のチャリティ・マッチ(異種格闘技戦)の対戦者であるヒールレスラー「サンダーリップ」役に起用されています。

 先生といえば当コラムでもネタにした『マイホーム・コマンドー』など超絶ポンコツ主演作がありますが、それに遡る『ロッキー3』出演時は日本での人気が本格化したとはいえ、米本国ではようやく人気が出始めた時期。

 また、ホーガンというとベビーフェイスのイメージですが、本作出演以前のWWF(現WWE)デビュー当初はヒールで、初期マネージャーが伝説の名ヒール"吸血鬼"フレッド・ブラッシーとあって下地は十分。
教科書通りの喚き立てるうるさ型ヒール像で、遊びのつもりのロッキーを本気にさせるショーマンレスラーの懐の深さを見せてくれています。

 一部では「無駄なシーン」という声もあるようですが、この試合は、ロッキーのモデルとなった実在の白人ボクサー、チャック・ウェプナーがアンドレ・ザ・ジャイアントとの異種格闘技戦を行ったことに由来しています。

 プロレスシーンの撮影に10日間かけ、プロレス用にマットに敷物を詰めたり、ロープワークをしやす易いようにロープを緩めたりコンディションを整えたこと。
サンダーリップによってロッキーが場外に投げ捨てられるシーンが、ウェプナー対アンドレ戦のオマージュになっていることからも、監督・脚本も務めるスタローン御大が真摯に取り組んだことを証明しています。

 そんなお膳立てもあり、ホーガンは本職レスラーとして誇らしい仕事ぶりを発揮。
ホーガン自身が本作出演のために当時WWFを離脱するという賭けに出て、その思惑通り全米規模の人気選手となったというのも、「本職」起用故かもしれません。

 本職だからこそ上手く演じられるというメリットがあるこの起用法。しかし、『スパイダーマン』(2002)で典型的なジョバー(ヤラレ役)扱いだったランディ・サベージのようなパターンが多く(露払いとしては見事な仕事振り!)、"本職役故のパブリックイメージへの影響"を踏まえると、「こんな○○見とうなかった......」案件になりがちなんだけども!

 作品としては、ロッキーが親代わりのトレーナー・ミッキーの今際の際についた、「(クラバーに)勝ったよ」という嘘を真実にすべく再起する流れがアツいワケですが、頼れる友達やパートナーが居ないとこれ無理じゃね?的なことを達観して、ボッチ的には変な涙を誘うかも?!

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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