インタビュー

人見知りでも出不精でも行きたくなる映画イベントや、旬の映画ニュースをお届けします。

【イベントレポート】大根仁さんが死にたい夜に観る映画は?

トークイベント「あの人の一部は映画でできている」より

イベントに登場した、大根仁さん(左)と川辺ヒロシさん(右)

 2月16日、渋谷のアップリンクファクトリーでトークイベント「あの人の一部は映画でできている(Vol.2)」が行われました! ゲストはTOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシさんと、映像ディレクターの大根仁さん。イベント中に語られた、それぞれの好きな映画をちょっとだけご紹介します!!



大根仁さんが死にたい夜に観る映画

IMG_6389.jpg

その1 『アポカリプト』
「眠れない夜に観る映画って、だいたい決まってくるんです。新規の映画を2時間観るということにはならなくて、かつて観た映画のあのシーンを観るんですよね。で、だいたいそういう夜って死にたい夜なんですけど、よく観るのが残酷シーン。人間ってここまでやるんだ!っていうのを観ると、落ち着けるんです」(大根さん)
 メル・ギブソン監督の『アポカリプト』は、マヤ文明末期の部族間抗争を描いた作品。セリフは全編にわたってマヤ語が使われているという異色作で、残虐なシーンが多いことからR15指定となっています。で、大根さんが繰り返し観ているのが、トランス状態の中で行われる生け贄の儀式のシーン。心臓をえぐられ、首を刈られ、ピラミッドのてっぺんから落とされる。ザッツ・残酷でっす!
「この酷いシーンは四の五の言わずにぜひ観てほしいですね。このシーンのあと、生け贄として連れて来られた部族の脱出劇が始まりますが、そこはもう興味ないんですよ。『アポカリプト』は僕の中ではこのシーンで完結してる。そこから先は『アポカリプト2』ですね!」

その2 『トゥモロー・ワールド』
「これも死にたい夜に観ています。ワンカット(長回し)のすごいシーンが3〜4つぐらいあるんですが、その中でも車の襲撃シーンはすごいですね」
 人類に子どもが生まれなくなった近未来を舞台にしたSF映画。『天国の口、終わりの楽園』や『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』などのアルフォンソ・キュアロンが監督です。
「アナログ的なことと、ものすごく巧妙なCGが合わさってできていて、カメラがどこにいるのかまったくわからない。ワンカットは監督のドヤ顔が見えやすくもありますが、ここまでやられたら心地良いどや顔です。クライマックスのワンカットもすごいシーンです」


川辺ヒロシさんが、"音楽"にズキュンときた映画

IMG_6382.jpg

その1 『ミーン・ストリート』『グッドフェローズ』
「マーティン・スコセッシが『タクシードライバー』のひとつ前に撮った作品。モノラル映画なんですが、音のバランスがおかしい! オープニングでロニー・スペクターの『ビー・マイ・ベイビー』がかかるんですが、普通のオールディーズをここまで暴力的な音量で流すということにびっくりしました。普通映画って、こんなバランスで音楽流さないですから」
 ロバート・デ・ニーロとハーヴェイ・カイテル主演の、チンピラ青春映画。ちなみに川辺さん、この映画にまつわるある持論をお持ちです。
「僕が22〜23歳の頃(80年代末〜90年代初頭)、シモキタのクラブとかに行くと、チーマーの走りみたいな人たちがいっぱいいました。で、そういう連中って、例えばすごく大きな声で笑いながら手を叩くとか、自分を誇示するようなリアクションをしてたんです。この"マナー"の元、僕は『ミーン・ストリート』だと思っています。つまり、当時シモキタにいたお洒落な奴らは、みんな『ミーン・ストリート』を意識していたんですよ。それか、素でそうなのかも知れないけど」
 また、同じくスコセッシの『グッドフェローズ』は、川辺さんが「スコセッシの最高傑作だと思っている」という作品。
「サントラが全部かっこいいんですよね。特にオープニングでかかる『rags to riches』(Tony Beneet)は、SOUL SETの出ばやしとして10年ぐらい使っていました」

その2 『Once ダブリンの街角で』
「すげーかっこいい素人バンドのサクセスストリーを作ろうよっていうパターンの映画、いくつかあると思うんですが、そういうタイプの作品の中でも一番上手くいっているものだと思います。監督自身がミュージシャンというのもありますが、曲のクォリティがすごいですよ」
 アイルランドのダブリンを舞台に、超低予算で作られたこの映画。当初アメリカではたった2館での上映でしたが、口コミによって140館に拡大された伝説級の映画です。素人バンドの録音に付き合わされて初めは面倒臭そうなエンジニアが、いつしか曲の素晴らしさに魅了されていた......という音楽の良さそのものが問われるシーンも「説得力がある」と川辺さん。
「演奏の途中でドラマーがカメラを見ちゃうぐらい、カメラワークは素人ですが。それがなんだ!っていうぐらい。音楽映画として本当に素晴らしいと思います。話もいいですしね」


-----Profile

川辺ヒロシ(かわなべ・ひろし)

TOKYO No.1 SOUL SETの屋台を支える凄腕トラックメイカー。クラブDJとしての長いキャリアの中で数多くの伝説的なパーティーのフロアを沸かせてきた。ソロの音楽活動も活発で、クラブDJ、リミックス、石野卓球とのユニットなど多岐に渡る。その感度の高い音楽センスとスキルで、ミュージシャンからのリスペクトも高い。

大根仁(おおね・ひとし)

演出家・映像ディレクター。1968年東京都生まれ。『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』などのテレビドラマ、フジファブリック『夜明けのBEAT』、スチャダラパー『ライツカメラアクション』、スチャダラパー+木村カエラ『Hey!Hey!Alright』、フラワーカンパニーズ『深夜高速』などのPVや舞台演出を手掛ける傍ら、コラム執筆、イベント主催など幅広く活躍。2011年に脚本・演出を手掛けた映画『モテキ』が大ヒット。


-----次回予告!
「あの人の一部は映画でできている(Vol.3)」が5月1日に開催予定! ゲストはBEAMSの青野賢一さんです。

« 前の記事「ニュースとイベント」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム