映画『The Future<ザ・フューチャー>』公開初日Skypeインタビューでのミランダ・ジュライ監督
ミランダ・ジュライによる長編2作目となる新作映画『The Future<ザ・フューチャー>』が、渋谷のシアター・イメージ・フォーラムで公開中です。35歳、ネット依存の女性と彼氏が"猫"をきっかけに未来へと歩み出す30日間を描いたこの作品。モラトリアム&モヤモヤ感満載なので、ぜひご覧いただきたい! のですが、その前に、公開初日の去る1月19日に行われた、Skypeによるインタビュー(映画終了後、観客の質問に彼女自身が答えるというもの)で語った内容をお届けします。
ちなみにミランダ・ジュライは映画監督のみならず、パフォーマンス・アーティスト、小説家など、アート&カルチャー分野でマルチメディア的に活躍。映像ディレクターで映画監督のマイク・ミルズの奥様でもあります。
なぜ猫を出演させたんですか? 他の動物じゃだめだったんですか?
「映画の脚本を書いていた時、近所の野良猫が車にひかれてしまう瞬間を見てしまったんです。まさにこの映画に出てくるパウパウと同じように。酷いことになってしまった、悲しい事件だなと思ったので、この猫の復讐を撮ってやろうと思いました。それが猫とこの映画の繋がりです」
ミランダさんは、小説やインスタレーションなど、いろんな形で表現をしていますが、『The Future』はなぜ映画にしたんですか?
「もともとは、パフォーマンスとして企画が始まっているんです。しゃべる猫とか時間が止まるとかTシャツが踊るというのはパフォーマンスの中にもあった要素。でもそういったシュールな表現は、パフォーマンスよりも映画のようなリアルな状況の中でやった方が面白いんじゃないかと思ったんです。本当の家、本当の猫、本当の状況の中にシュールな要素を取り込むことは、私にとっては大きなチャレンジ。また、パフォーマンスの要素を映画にしていくという作業は、私自身に新たな視点を与えてくれました」
映画の後半に、主人公のソフィ(ミランダ・ジュライ自身が演じている)がTシャツにくるまって踊るダンスシーンがありますが、そこに込めた意味は?
「私はダンサーではないので、当然すごいダンスはできません。だから自分にできるようなダンスを編み出そうと思ったんです。私が演じたソフィという女性は、とても自意識過剰なんです。それを逆手にとって、本人は周りが見えないという状況の中での、内面的なダンスにしました。それは、自意識過剰だった自分の反対であり、自分が何者でもないということを受け容れることでもあるんです。とても短い時間ではあるけれど、自分が見られていない、見られているということを忘れられるその瞬間は、まさにクリエイティビティの出発点だと思います。でも、実は見られているんですけどね」
ご自身もネット中毒だとか?
「そうなんです。でも私だけでなく、夫も同じようにネット中毒だと思います。で、最近気をつけているのは、必ず同じ部屋でインターネットをするようにすること。お互いにオンラインなのに、全然違う部屋にいるなんて最悪ですからね」
最近は、何をしてるんですか?
「毎日机に向かって小説を書いています。あと、ちょうど10ヶ月になる赤ちゃんがいるので、子どものお世話をしています」
ミランダさんが、仕事において、また人生において大切にしている信条は?
「マイク・ミルズだったら"すべて"と答えそうですね。私の場合は"自由の感覚"です。むしろ、すべてのものはその"自由の感覚"を守るために作っているのかもしれません。もちろん幻想なんですけどね。何かにコミットして作り上げるということは、自由であるというのは相容れないことだと思うので。ただ常に新しい感覚を持つということ、アマチュアだという感覚を保つということは、すべてのプロジェクトのスタート地点で大切にしていることです。だからこそ、新しいメディア、新しい手法をいつも試みたりしているんだと思います」
今日着ていらっしゃる服について教えてください
「クリスマスに夫からプレゼントされたものです。このところ寒かったのでなかなか着られないなと思っていたんですが、今日みたいな特別な日に着ればいいんだ!って。初めて着てみました。みなさんも明るい色の服を着ていますか?」
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カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞した『君とボクの虹色の世界』(2005年)に続く、ミランダ・ジュライの長編第2作。
シアター・イメージ・フォーラムにて公開中! ほか、全国順次公開
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ミランダ・ジュライ
映画にとどまらず、コンテンポラリー・アートや小説など、多方面の創作で活躍中。1974年米国カリフォルニア州バークリー生まれで現在ロサンゼルス在住。
コンテンポラリー・アーティストとしては、ビデオ作品、パフォーマンス、ウェブでのプロジェクトがニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、ホイットニー・ビエンナーレで紹介されている。
作家としては、短篇小説集『いちばんここに似合う人』が、フランク・オコナー国際短篇賞を受賞し、20カ国で出版され、次作の『It Chooses You』が新潮社より邦訳(岸本佐知子訳)発行予定。