実はよく知らない自分の体、ちょっとのぞいてみませんか?
- 『面白くて眠れなくなる解剖学』
- 坂井 建雄
- PHP研究所
- 1,512円(税込)
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いつもちゃんと動いて当たり前の自分の体。ちょっと調子が悪いと「どうしたんだろう」と心配になりますよね。体に良いものを食べたり、運動したりと日頃から健康に気を使っているつもりでも、体の中のことまでは、なかなかわからないものです。
そんな人間の体について、解剖学の見地から分かりやすく解説しているのが、坂井健雄氏による本書『面白くて眠れなくなる解剖学』です。
順天堂大学医学部教授の著者・坂井氏は、本書を献体者及び遺族に対する感謝のきもちから始めています。「そもそも解剖学という学問は、人の善意で成り立っていることを忘れてはなりません。医学のためとはいえ解剖するにはご遺体が必要なわけで、解剖させていただくのは、ご自身の意志によってお身体を提供してくださったボランティアであるということです。そして、ご家族の方々が、献体者の意志を尊重して解剖を許してくださった結果です。そのお気持ちを考えると、ご遺体を疎略に扱うことは許されません。」(本書より)
医師の卵たちに解剖学を教える著者は、「人体解剖」とは医学の基礎知識を与えてくれるばかりでなく、医師として人命を尊重する心構えを培かっていく貴重な経験であると感じているそうです。
さて、人類の歴史は、病気や怪我との闘いの歴史とも言えます。西洋では古代から、病気の治療に生かすべく人体解剖が行われていましたが、長い間、民間信仰のような医術の域を脱することはありませんでした。しかし、そうやって人体構造の探求を積み重ね「解剖学」が確立した19世紀以降、病気の原因究明と診断法、治療法の開発は飛躍的に進歩を遂げました。
本書では、体幹の構造、骨や筋肉の数や名称、内臓の働きと仕組みなどが丁寧に紹介されています。
例えば、筋トレの流行とともに注目を浴びているシックスパッドは、お腹にある「腹直筋」の間に「腱画」という腱があることで表れるのだとか。「なぜ中間に腱が挟まれているのかはわかっていません。ただ、筋肉の線維が長いと、それだけ壊れるリスクも高まり外力に弱くなります。ですから、間に腱を入れることで、動きが妨げられることはありますが、丈夫になって安全性は高いと考えられます」(本書より)
また、人間のお尻はゴリラよりも膨らみがあって大きいという事実は、ちょっと意外です。人間のお尻が立派な理由として、著者は「一つはおなかの内臓を受け止めるために骨盤が横に広がっていること。もう一つは、直立するためにお尻の筋肉が発達していることです」と説明しています。
眼球の周りには、びっしりと脂肪が詰まっており、筋肉や血管、神経を柔らかく包み込んでいることや、地面を強く蹴るために踵が突き出ていることなど、複雑で精緻な仕組みを備えた人体の構造には"理由"があり、何一つとして無駄がないという事実は、感動的でさえあります。
子どもの頃、理科室の人体模型が何よりも怖かったという人でも、この本を読み進むうちに、人体の不思議に引き込まれてしまうでしょう。人間は誰しも、人体という「神秘に満ちた小宇宙」を持つ特別な存在なのです。本書は、人体への探求心を通じて命の大切さを教えてくれています。